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退院報告 [自分のこと]

退院しました。(3月9日修正)
副鼻腔炎の手術は、予想よりうんと辛かった。時間は約一時間ほど。局所麻酔だったので医師が説明しながら進めるのだが、途中で後悔した。
手術は鼻中隔矯正と蓄膿の二本立て。鼻中隔矯正術の時、軟骨の削除は驚いた。軟骨だからというイメージとはかけ離れたボキボキ、パキパキという、まさに骨が折られていく脳髄に響くような音に気絶しそうになった。蓄膿の手術では、鼻タケを「切除」というイメージとはこれまたかけ離れていて、骨にくっついているものをこそげ取っていくようなゴリゴリという音が響き、さらにノミとハンマーで削られ、ドリルで骨の孔を広げられる。

手術後、鼻の中にタンポン(ガーゼ)を詰められた。鼻から全く呼吸が出来ない。これが辛い。口の中はカラカラになってひび割れしそうになる。水でうがいをして湿り気を与えても追いつかない。それから飲み込むことがこんなに難しい事だとは思わなかった。嚥下しようとしても口を閉じてしまうと鼻から空気が抜けないために口の中はいわば真空状態になり食道に落ちていかない。隙間がないと駄目なのだ。慌てて口を開けると含んでいた水が飛び出す。慣れるまでに苦労した。鼻の奥に物が詰められているからか、目が開けづらく、開けても涙が溢れてきてしかも痛いものだから長く開けていられない。

手術から三日目に鼻に詰めてあったタンポンを抜いた。これは手術より辛いという人が多いのだと看護士さんに聞いていたから相当に覚悟していた。覚悟より少しだけ辛かったが落差が少なかった分だけ耐えられた。驚いたのはその詰められていたガーゼの量。片方に十五センチ(四方?)強の長さのガーゼがなんと四枚も出てくるのにはまいった。せいぜい二枚くらいかと思っていたのに、三枚目を抜いてから「はい、これが最後ですよ。もう少しの我慢ですからね」といわれてギョッとした。これが覚悟との落差の分だった。普段、自分の身体にある空洞に思いを馳せることはほとんどないと思うが、鼻の穴奥に広がる自分の身体の見えない一端を垣間見たような不思議な感覚だった。この処置がすんでからやっと地獄から生還してきたという実感を持った。が、ずっと綿球を入れていなければならない。だけど綿球は空気を通すし食べるのもうんと楽になった。目も開けていられるし、涙も出てこない。また、なんだか頭がすっきりしたような感じはする。肩こりはさらに楽になった。マッサージをした後のように世界が明るく見える。

誤算だったこと
睡眠:ひたすら寝てやろうと思っていた。入院日と翌日の手術までは実際にひたすら寝た。だけど術後は鼻が詰まった状態で熟睡できない。タンポンを抜いた後も綿球が鼻に入っているので快眠とは言い難い。夜中に何度も起きる。綿球を抜き鼻奥に通り抜ける空気の新鮮さを味わいつつ、新しい綿球を詰める毎日だった。
治療:手術が終わり、腫れも引くとそれでお終いかと思ったが、この後治療が三ヶ月も続くことを知って脱力した。しかも、鼻に詰める綿球は今後二ヶ月に渡って継続しなくてはいけないし、激しい運動も禁止ということで、思わず主治医を睨んでしまった(苦笑)。
読書:積んであっただけの本の中から3冊だけ選んで持っていった。これはしかし、余計な荷物となった。鼻が詰まっていると集中力もなく、読書どころではなかった。
嗅覚:匂いが全然わからない。匂いがわからないと食べ物の味がおかしい。甘さとか酸っぱさとか単純な味はわかるのだが他はなんだか単なる刺激しか感じない。舌がまるで機械のセンサーのようだ。

勝手に面白いと思ったこと
夢の話し:入院した部屋は四人部屋。斜め向のベッドには80歳をゆうに超えたお年寄りがいた。この方は喘息のようで、夜中に咳き込んだり苦しそうだった。ふだん呼吸する時も気管支に刺激を与えないようにするためか、ハーウとか、ハーアとか声を出しながら大事に息をされていた。お年寄りは耳が遠いらしく、毎日見舞いに来られていた奥さんとの会話が面白い。しかし、奥さんにはとてもやさしいご主人だった。
5日目の消灯後のこと。私はすぐにうとうとし始めた(ようだ)。夢を見た。夢の中で激しく娘と言い争いをしている。激しく怒りつつ、だけど夢の中で自分の怒りがちょっとこれは異常ではないかと心配になって自分の怒りの原因や相手がなぜ娘なのかを探ろうとしていた。しかし、制御も出来ずついに大声で「ばかやろうー!」と怒鳴ったところで飛び起きた。そうしたら、なんと斜め向のお年寄りが普段の様子から考えられないような、くっきりとした響き渡るような声で「ばかやろー!」と怒鳴っていたのである。じっと息を殺して様子をうかがうと、どうやらお年寄りも寝言を言っていたようなのだ。
となりのベッドの若者に「俺、今寝言でばかやろーと言った?」と訊ねたら「いいえ、言ったのは前のおじいさんです」という。すると、私は老人の大きな寝言を聞いた瞬間に、ほとんどディレイタイムもなしに娘と言い争いをして憤怒に駆られて怒鳴ったということなのだろうか。
普段は苦しげで小さな声でしか話さない、しかもとてもやさしい会話を奥さんとしているお年寄りのあの怒りははたしてどこから誰に向けたものなのかと不思議に思いつつ、ひょっとして夢の中で私とお年寄りはシンクロしていて、実は私の怒りがお年寄りに大声の寝言を言わせたのかもしれないと思ったが、確認はしなかった。


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シマリス

miyataさん、お帰りなさい。
手術はお疲れ様でした。想像以上に大変な手術・・・手術と名の付く物にはどんな小さなところでも簡単なものってないのですね。
私も手術の経験者、もう二度とあの体験はイヤです。でもその場でそれしか選択が出来なかったら、仕方のない事ですもの。。。
局部麻酔は本当に工事現場状態で、もうそれだけで具合が悪くなると言うもの、心臓に悪いです。
医師は自分のことではないから、患者のことも自分の家族・恋人を思って欲しいものですわ。
あの頃のことを思い出すだけで、悔しい、悲しい。

まだしばらくは通院ですね、無理をしないで下さいませ。
by シマリス (2007-03-08 16:22) 

練習菌

夢は時間を超越していますね。
テレビの音を題材にして、あたかもリアルタイムであるように
映像とか、極端な話、歴史背景みたいな物を瞬時に?構築して、
ゆめを見ていますからねえ。
by 練習菌 (2007-03-08 22:06) 

お帰りなさいませ。ペコリ(o_ _)o))
入院して手術されたようで、お疲れ様でした。術後の通院も面倒でしょうけれど、できる限り医者から『もう大丈夫です』と言われるまで続けてください。完治できるものならそれに越したことはありませんので。

あ、余計なお世話でしたらすみません。"○j乙土下座
by (2007-03-08 22:26) 

miyata

シマリスさん、こんばんは。
さっそくのコメントありがとうございます。時間的には簡単な部類の手術かもしれませんが、後が大変ですね。私はかなりタフな方だと思いますが、この年になって気がつくと体のあちこち、まるで切られの与三郎みたいです(__;)
お医者さんもいろんな人がいますからねえ。前にNHKで見た北海道旭川の脳外科医さんには感動しました。
そうそう、今回の執刀医はなかなか感じの良い医者だったのですが、サブについた医者がおかしな人で、手術の順番を専門用語で全部復唱するんです。で、途中で執刀医が「おい、○○!もういい!」って怒ったのには笑いました。
by miyata (2007-03-09 00:12) 

miyata

菌さん、こんばんは。夢は面白いですねえ。夢が脳内に生成されるときは時間が無いのかもしれません。夢と認識する、あるいは認識するときに時間軸を置いて理解するのかもしれませんね。
by miyata (2007-03-09 00:16) 

miyata

kuriさん、こんばんは。
これって、完治するんでしょうかね?ってふとそんな疑問を持ちました。とりあえず、説明をしつこく聞いた限りでは、再発しにくくするための処置としか理解できなかったんですけど(__;)
by miyata (2007-03-09 00:18) 

左膳

お疲れ様でした。それにしても、手術の生々しさ拙者の手術の場合
全身麻酔だったので、骨を削る音など聞こえなかった分だけ
良かったのかな。
by 左膳 (2007-03-09 09:24) 

土佐湾

miyaさん心配しておりました 大変な思いをなさいましたねェー。
お大事になさってください。
by 土佐湾 (2007-03-09 11:31) 

ほんのり

うんうん、局所麻酔はDr.の話し声やら色々聞こえてきて複雑な思いをしますよね。
これから自宅での通院治療になると、どうしても無理をしてしまいますから、焦らずにね…
奥様の状態も心配だし、自分の体調にも気を使わなくてはならないし…
こういう時は、色々な福祉的なサービスを使ってしのいで下さい。
一人で頑張ろうとしないでね。
by ほんのり (2007-03-09 12:26) 

Silvermac

入院、手術とは大変でしたね。アップがないので心配していましたが、余程悪かったのですね。辛い手術とアフターケアーも大変ですね。四人部屋の観察、miyataさんらしくて良いですね。私も修理に立ち会いのため、来週水曜日に退院するか、一時帰宅するかどちらかになります。
by Silvermac (2007-03-09 14:31) 

お帰りなさいませ。
最初の一段落目を読んだだけで、鼻が痛くなりました・・・
TVなどでもある救急医療の再現VTRとかリアルな話弱いです。
まるで、自分がなったような錯覚に陥ってしまって。。。。
妻が倒れたときも、救急車の中で自分もホントに倒れそうでした。。。
鼻にできものができただけでも集中できないですから、辛かったと存じます。退院後もしばらく通院とかあるのでしょうか?だとしたら、しばらく大変ですね。
by (2007-03-09 21:17) 

tomoko

お帰りなさい!心配してました。
私は病気しない人なので痛さには、からきしダメでため息が出てきました。辛かったですね、山の様な問題を抱えて入院、又家に居る人達随分心配した事でしょう。
是で自分の身体だけでもスッキリすると見も軽く色々出来ますね。
息子さん、娘さん、の労をねぎらい、、病体を無理せず頑張って下さい。
行けなくてごめんね・・・・。
by tomoko (2007-03-09 21:41) 

小夏

お帰りなさい。お疲れ様でした。
miyataさんの素晴らしい文章で痛さが伝わってきました。
想像以上に大変だったようですね。
すぐに、スッキリといかないかもしれませんが。。。
日にち薬ともいいます。
どうぞ、御自愛くださいね。
by 小夏 (2007-03-09 22:03) 

Silvermac

ViolaMacです。
大変な手術だったんですね。
一日も早く完治されることをお祈りしています。
どうぞ、お大事になさってください。
by Silvermac (2007-03-10 10:51) 

miyata

左膳さん、こんにちは。
骨をさわられる音というのは不気味ですね。全身麻酔は後々の体調がおかしくなると思いませんか。私はなんだかそういう気がします。(三回経験あり)
by miyata (2007-03-11 05:37) 

miyata

土佐湾さん、こんにちは。
ご心配いただき、ありがとうございます。これから先、あまり同じ目に遭いたくないですね。きちんと治すようにします。
by miyata (2007-03-11 05:43) 

miyata

SilverMacさん、こんにちは。
入院されているとはつゆ知らず、ブログで拝見して驚きました。わざわざお越しいただき恐縮です。SilverMacさんこそ、早くよくなられることを祈っております。
by miyata (2007-03-11 05:45) 

miyata

タケノコさん、こんにちは。
実は、わたしもそうなんですよ。ホラー映画なんかからっきしです。
小さい頃、鉄棒から落ちて頭を切ったとき自分の血を見てから泣き出しました(^◇^;)
手術前には鼻づまりのような症状は全然なかったのでかえって今の方が辛いです。でも、頭痛もないし目の焦点が合いにくいとかが無くなっているので、希望が出てきます。
by miyata (2007-03-11 05:52) 

miyata

ほんのりさん、こんにちは。
ほんのりさんも局所麻酔の手術経験者なんですね。面白いというか、不思議ですね。今週いっぱいといっても明日までですが、息子と娘に甘えさせてもらいます。とりあえず、日常生活は問題なさそうです。無理せずにやっていきます。
by miyata (2007-03-11 05:58) 

miyata

ともちゃん、こんにちは。
いやあ、どんな手術でもそうでしょうけど、あんまり経験したくない手術でしたね。ハンマーという声が聞こえたときゾッとしましたよ(笑)
息子、娘はなんか、うんと大人に(ってもう立派な大人なんですが)なったように見えてしかたありません。しっかりお礼は言いましたよ。匂いが復活したら、みんなで美味しいものを食べに行こうと約束しました。
by miyata (2007-03-11 06:01) 

miyata

小夏さん、こんにちは。
たぶん、手術としては大げさなものではないと思うのですがねえ。
以前はほんとに大変な手術だったそうですね。今は内視鏡でやるから簡単だといわれて真に受けていたものですから、骨の音にまいりました。
とりあえず、しばらくは我慢ですけど、両鼻で大きく深呼吸が出来るときがくるのを心待ちにしてます。(だいたい三週間ほどでそれはできるそうです)
by miyata (2007-03-11 06:05) 

miyata

ViolaMacさん、こんにちは。
ありがとうございます。Violaさんもご主人が入院されて大変ですね。
はやくいつもの生活に戻れるように私の方も祈っております。
by miyata (2007-03-11 06:08) 

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