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無題 [介護と日常]

入院してからまもなく、あり得ない三週間目が近づいてきて、ようやく変化が見えはじめた。
危機的な血圧低下に対して、投入された薬に体が反応が出来ないでいた。それほど体が弱っていたわけで、強い薬を目一杯投与していたものの、このままでは心臓が持たなくなるギリギリのところで、血圧が戻りはじめた。心臓に負担が大きいイノバンという薬の量もやっと減り始めたのだが、今日その薬の投与を終えたと告げられた。血圧はそれでも100前後を維持してくれている。

昨夜病室で子供達と一緒になり、久しぶりに三人で居酒屋に寄った。咳で噎せ、苦しそうな表情に甦ろうとするエネルギーを感じ取った安心からだった。やはり、生命にはエネルギーが宿っている。今まで妻は何度も入院したがそのエネルギーがまったく感じられないのは今回が初めてだった。

医師から危篤が告げられたとき、医師は「むしろ、奥さんのように重篤な下垂体障害を負っておられるのに10年も生存している事実に驚いたのです。今までが本当にギリギリで生きてこられたのだと思います。1月に診させてもらったときの安定が実はそういうことだったということでしょう。私が奥さんのことを覚えているのは、下垂体障害なのに、どうしてこんなに安定しているのかという驚き、そういうことが前提にあったからです」と、言った。私はその時自分の希望を伝えることを断念せざるを得なかった。すでにその時妻は仏様のような顔をしていたのだった。

外は曇っている。まだ外は寒いが、街のあちこちに春がひそんでいるのが見えはじめた。
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すず音

若いときに 恋人が突然死をして
そのお母様に 随分侮蔑的なことを言われました。
それでも 忘れられずに 京都のお寺に通いました。
昨年やっと 許されましたが 彼のお墓には 足を運ぶことが
出来ずに 半跏思惟像さんに 毎年報告してきました。
彼の家は カトリックでしたので・・・
せめて 息を引き取る時に 私の側に いて欲しかった。
どうして たった一人で逝ってしまったのか
何で私が側にいてあげられなかったのか・・・
拡張型心筋症の彼の心臓は 静かに止まったと
そう思うしか ありませんでした。
ずっとずっと 後悔と反省の繰り返しでした。
側にいてくれるだけで良いのです。今はそう思います。
by すず音 (2012-02-22 21:01) 

yakko

こんばんは。
奥様ご自身の生命力の強さとmiyataさんの献身的な愛だと思います。
by yakko (2012-02-22 22:32) 

hana2012

miyataさん、こんばんは。
これ程大変な状況にいらっしゃると言うのに、同じブロガーとしてお気楽な記事ばかりで申し訳なく思ってしまいます。
ご家族の皆様もそうですが、ご本人が一番頑張って生きようとなさっているのですね。
それは今だけに限らず、ここまでの10年と言う年月。
同じように私も発症から丸7年経ち、過ぎてしまった今ではそれはアッと言う間と思えるのですけれど・・・
奥様のお身体自体はずっと一生懸命でいらした。その事実がとても重たいです。
毎日、さぞお疲れでしょう。どうぞお体をご自愛ください。
by hana2012 (2012-02-22 22:43) 

Silvermac

休息を十分とってください。
by Silvermac (2012-02-22 23:06) 

tonton

こんばんわ。
奥様の回復願いとmiyataさんの愛にnice!を・・・

奥様の血圧が回復されたんですね。
miyataさんがすこしても安心できる状況になったことがうれしく思います。

まだまだ寒いですね。miyataさんもお体には十分気を付けてください。
by tonton (2012-02-22 23:26) 

ほんのり

おはようございます。
今日も一日が始まりましたね、無事な一日になりますように…

父も五度目の危篤状態をくぐりぬけた一ヶ月でした。
主治医に「私、オオカミDr.と言われてしまいそう。〇〇さんの生命力には驚いています。」
科学では、解明できないような事がいっぱいありました。
最後の一ヶ月は、水の点滴だけでした。
by ほんのり (2012-02-23 06:11) 

miyata

すず音さん、こんばんは。
決定的な別れが、忘れることを許さずにいつまでも二人を繋ぐのですね。
辛い記憶を書いてくれてありがとうございました。そうしようと思います。
by miyata (2012-02-23 19:25) 

miyata

yakkoさん、こんばんは。
そう言われると照れます。子供二人も献身的です。病人が家にいることに対して、嫌がるそぶりも見せることなく、よくできた子供達だと多少親バカっぽく誇らしくなります。
by miyata (2012-02-23 19:28) 

miyata

hanaさん、こんばんは。
なにをおっしゃいますか。楽しくておいしくて理知的なブログにこそ、勇気をもらっています。それは、hanaさんが書いているからこそです。
ギリギリで生きていたと医者に言われて私もハッとしました。まだまだ至らなかったなと思いました。一人の人間の重さはやはり抱え込めないほど広大な宇宙なんだと思いました。
by miyata (2012-02-23 19:32) 

miyata

SilverMacさん、こんばんは。
いつもお気遣いいただき、ほんとうにありがとうございます。
by miyata (2012-02-23 19:33) 

miyata

tontonさん、こんばんは。
確実に回復基調にあります。きっと、命を維持するところで精一杯の回復になりそうなんですけど、それでも、そうなってくれればうれしいです。どうもありがとうございます。
by miyata (2012-02-23 19:35) 

miyata

ほんのりさん、こんばんは。
オオカミDr.さんですか(笑)。私のところの医師にもそう言わせたいですね!そうなる可能性が今日また大幅に出てきました。挿管されたチューブが外され、自発呼吸で酸素を保てるようになったのです。反応はまるでありませんが、間違いなく私たちのいる世界に戻って来てくれているようです。これからです。望みは捨てるものじゃありませんね。つくづくそう思いました。
by miyata (2012-02-23 19:41) 

マオ

祈っております。
by マオ (2012-02-24 20:25) 

miyata

マオさん、ありがとうございます。
by miyata (2012-02-25 07:58) 

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