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ビデオレター 経過10 [介護と日常]

妻の姪の結婚式が今日東京で行われる。もともとは家族四人で出席する予定だった。義兄夫妻が見舞いに来てくれた時、妻の意識はまだなかった。だがその後驚異的な回復を遂げた様子をビデオレターにして持っていこうと企画したのが娘だった。
談話室でその撮影が行われたのが祭日の木曜日。果たしてうまく喋ってくれるのかリハーサルを含めて四度撮影したそうである。そうであると書いたのは、その時私は病院に行かなかったからだ。結婚式に出席する娘と息子が病院に行き夕食後人がいなくなるのを待って短い映像を撮影した。
ところがその日に限って談話室は大にぎわいで、上手く行ったと思ったら人がワイワイと入ってきて中断を余儀なくされたと息子は悔しがる。
リハーサルが一番すごくて、回数を重ねるに従って話す内容が少なくなり、結果的にとてもシンプルでよいものになっていた。
撮り終えて家に帰ってきてからの話題は、最初になにを話すか練習しようと娘が妻にいい、話し始めた内容のことだった。

「○○子、結婚おめでとう。早くいい人が(ちっとも早くないのだが)見つかってよかったね。幸せになってね。だけど、「女の道」というものがあるから、そこはよく考えてね。おばちゃんは怪我をして困ってるの。行けなくてごめんね。(人が入ってきて気が散って話せなくなる)」

息子 「女の道」ってなんや。なんでお母さんそんなこというの?
娘  私はなんとなくわかるような気がする。
息子 だから、なんやって聞いてるのに。何となくわかるではわからんやないか。

帰ってきた子供達との話は、こんな感じだった。私は、少々驚いていた。結婚前と結婚してからもちっとも変わっていない事に対する驚きだった。説明すると、別に難しい話しではなく、彼女の変わらぬ主張だった。彼女が言う「女の道」とは「自分」の事である。ようするに、結婚に縛られて自分を捨てるんだったら一人で生きていけ。結婚をしてもそういう覚悟を忘れるなという彼女の素朴で荒っぽくて健康的な思想でもある。

娘  ふーん。ま、近いっちゃあ近い感じでわかってたけど。
息子 ほんまかいな。なんか調子が良いとしか思えへんけどな、あんた。
娘  なんでや!ちゃんとわかってるわ。そやけどな、おとんもおかんもかっこええこと言うけどな、ええ加減な親やで。人が受験勉強真剣にやってたらそんなつまらん勉強するなって文句言うし、教師になるといったらそんな職業に就くなって文句言うし、陶器すると真剣に相談したらあんたは向いてないって露骨に言うし、どうせえっちゅうねん(笑)。
私  ま、上等な親じゃないけどお父さんもお母さんもそんなに悪いアドバイスをしたわけではなかったと今でも思うけどな。
娘  ふん!ふん!
息子 それで今があるからいいやんか。なんでそんな話しになるねん。あんたの話じゃなくて、お母さんの話やんか。
娘  うるさい!○○子姉ちゃんも結婚するし、私も関係あるんや。
− − − 以下いつものバトル − − −

もちろん、そんな思想はいつも現実に裏切られ続けるに決まっている。でも、それを今も手放していないのを知って私は泣けた。

久しぶりに一人っきりの夜だ。この開放感は何ともいえない。きっと子供達も同じ気持ちで東京に出かけたのだろう。10時過ぎに電話がかかってきた。娘だった。泊まっているお台場のホテルからだった。すでにうとうとしていた私は起こされることになったが娘のあっけらかんとした声に和んだ。

「めっちゃ、良い部屋!おっちゃん、奮発したんやな(笑)。お母さんのビデオ見せたよ。それじゃ、おやすみ」

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コメント 21

ほんのり

おはようございます。
奥様のおっしゃる「女の道」、私もお嬢さんと同じように言葉では表せないけど、なんとなく理解できるように想います。
奥様、すごいですね。凛々しいです。
何度の病気にめげず、芯が一本通っていらっしゃるのですね。
いっぱいご不自由な事もおありでしょう、でも、その芯が奥様らしさであり、それが失われないって事、なんて素晴らしいのでしょう。
miyataさん、大変でしょうが、看病のしがいがありますね。
by ほんのり (2010-02-13 09:18) 

yakko

お早うございます。
良いお話ですね〜 素敵なビデオレターが出来たことでしょう !!
「女の道」ですか〜 篤姫では「女の道は一本道」でしたね。
姪御さんの結婚式、無事に終わったんですね。(*^_^*)
miyataさんそしてみなさま、おつかれさまでした。
by yakko (2010-02-13 10:57) 

hana2009

miyataさん、こんにちは。

これまでのmiyataさんの日記からも感じておりましたけれど・・・
お子様達の仲良しなご様子、上の書かれた会話からも伺う事ができました。
賑やかな中でも、素敵なビデオレターが撮られたのですね。

奥様のおっしゃる「女の道」・・・ちゃんと、娘さんへと受け継がれていらして・・・
ささやかながら、この私もその女の道を歩いている中のひとりかもしれません(笑)

宿泊されたホテル、お台場でしたらNかM(今は名前が変わってしまっているかと・・)
私はどちらも宿泊済みです。お部屋から眺める夜景の美しさはまさにリゾートホテルですね~☆

by hana2009 (2010-02-13 12:12) 

tomoko

少しは安心できる状態になって良かったですね。
先ほどK君に電話して色々話をしましたが、あちらでも
奥さん眼が余り良くない状態とか、お互い若くは無いので
身体があちこち故障は仕方が無いですね。笑

親子の会話楽しそうで、ホッとした感じが、しみ入ります。
やっぱり子供って、癒され幸せを感じる相手ですね。

ビデオレターの計らいも泣けて来ます。
いっぱい、いっぱい頑張ってね。


by tomoko (2010-02-13 20:17) 

SilverMac

「女の道」、奥様の生き方でしたか。
by SilverMac (2010-02-13 22:27) 

miyata

ほんのりさん、こんばんは。
嫁さんは職人の世界でずっと「女」を背負わされて戦っていた面がありましたね。「女流」の枠を突破することは彼女のテーマでもありました。そういう話は娘といろいろしていたようですね。まあ、道半ばで倒れてしまったわけですがそういうことは忘れていなかった事に驚きました。
by miyata (2010-02-14 03:39) 

miyata

yakkoさん、こんばんは。
>篤姫では「女の道は一本道」でしたね。
ああ、そうでした!確か自害した侍女が篤姫に伝えてましたね。かっこいいなと思って見てました。嫁さんのはそんなかっこいいものではないと思うんですけど^_^;
いつも自分の言葉でドキッとすることをたまにいう嫁さんではありました。夢のようなことばかりを言う私にとっては目の上のたんこぶでしたね(笑)。
by miyata (2010-02-14 03:50) 

miyata

hanaさん、こんばんは。
わが家は仲が良いというか、騒々しいというか・・(__;)
だけど、着実に主役の座は奪われつつありますね(苦笑)。
お台場のホテルはそんなに良いのですか。残念だったなあ。私、お台場にはフジがまだ工事中の頃、空き地が広がっている頃に行ったことがあるきりです。ディズニーランドも行ったことがないしなんだかこのまま一生を終えそうな気がしてきました(悲)。
by miyata (2010-02-14 04:01) 

miyata

ともちゃん、こんばんは。
わが家は、私をのぞいて皆が元気なのが救いです。兄がペースメーカーを埋めていたのは驚きました。あんなに頑健だったのにあっという間に大きな病気を連続してしまうなんて。それでも兄はすでに両親の年齢を超えました。私は後二年で父の年齢を超えます。私の現在は、まるで父の晩年を再現しているかのようです。
子供達が独自に嫁さんのことを含めた今の生活を組み立てはじめたようです。その分私自身は埋没していくようです(苦笑)。
by miyata (2010-02-14 04:10) 

miyata

SilverMacさん、こんばんは。
女房は若い頃からいろんな制約を背負って、きっと必死に頑張っていたのだと思います。今はなくなりましたが市内に一つだけ残っていた登り窯がありましたが、その窯は女房が仕事を始めた頃は女人禁制だったそうです。その窯に品物を最初に詰めたのが女房だったとか、そんな話がけっこうあります。
by miyata (2010-02-14 04:14) 

miyata

タケルさん、niceありがとうございました。
by miyata (2010-02-14 04:15) 

うしさん

女の道。私は母から(明治生まれの職業婦人)女に付きまとうことは家事
、とにかくさっさとできねば自分を育てられない。わつぃから娘にも煮たようなことを言いました。だから早くから炊事ははやくかえったものがしました。
しかし娘は一人でもガスを使っても言いのは5年生からでした。
カレーを作ってごはんをたいてくれていました。
今でも家事は大好きです(仕事も好きですが)
お父さんが働けなくなったら私が働く!中学校ぐらいだったかな?
by うしさん (2010-02-14 21:00) 

タケノコ

ビデオレターはよいことを企画されましたね。
行けなくとも思いが伝わったのではないでしょうか。
娘さんもその背中を見て・・・と言った感じが致します。
お一人のゆっくりできましたか?
by タケノコ (2010-02-14 21:42) 

練習菌

息子さん、、男のくせに議論好きなんですねえ。
miyataさんの血をひいたか。
私も議論は好きですけど、普段はだんまりだなあ。
よほど気の合う人としかしゃべらない。
あっ、ああ、そうか〜 納得。Ω\ζ゜)チーン

しかし、受験勉強ほどつまらん物はないですなあ。
最近つくづくそう想います。
紙の上に書きなぐる為だけの知識なんて、意味が無い。
実生活、人生に応用出来る形の知識でないと、学ぶだけ時間の無駄だ〜。
by 練習菌 (2010-02-15 17:09) 

miyata

うしさん、こんばんは。
私は両親の事情があって高知の田舎町で今でいう核家族育ち。嫁さんは京都で三世代同居。嫁さんは家業でずっと働いていたので私の子供達はおばあちゃんに育てられたようなものです。おばあちゃんは大正生まれでしたがけっこうハイカラな人で子供達をのびのび育ててくれました。
私のおばあちゃんは当然明治生まれの人で、怖い人でしたね。小学生の頃はじめて会った時一緒に住まなくて良かったと思いました(苦笑)。でも怖い中にもなんとなく内孫ということで愛情みたいなものを感じました。
嫁さんのいう女の道は家のしきたりとかしつけとかとはちょっと違っていて、そんなもの自分が岐路に立った時あっさり捨てられる度量と技量を持て。女を捨てるな。男になるな。ということだったと思います。とにかく「女流」の壁を破りたいという野望は持っていましたね。まあ、どっちもしんどい夫婦でしたけどね。
by miyata (2010-02-16 03:34) 

miyata

タケノコさん、こんばんは。
ビデオレター、私もあんなものはTVドラマの世界のこととしか思ってなかったです(^^ゞ
とても喜んでもらったそうで、私も安心しました。娘はどうなんでしょうね。よくわからないというか、あんまり考えていなかったりします(;^_^A アセアセ…
by miyata (2010-02-16 03:39) 

miyata

練習菌さん、こんばんは。
息子は議論好きなんでしょうかね。姉とはたまに言い争いをしますがたいがい負けてその場を去りますけどね。女には勝てないと思っているところが私に似ているかもしれません。
ちなみに私は議論好きじゃあありません。若い頃はただケンカ好きだっただけです(^_^;)\(・_・) オイオイ
娘が学生時代に進学塾の講師のアルバイトをしている時にちょっと不快感を感じて辞めろっていったことは覚えていますが、言っただけのことで受験勉強を止めろと言ったことは記憶にございません(^^ゞ
受験勉強って全部が無駄だとは思ってませんが、幼稚園から中学校までの「お受験」、あれを自分の子供に強いるのは考えられなかったです。
by miyata (2010-02-16 04:00) 

うしさん

女流の壁
すごいことですね
もしご病気をなさらなかったら。と私でもものすごくくやしくおもいました。
娘さん息子さんを育てて下った奥様のお母様でしょうか
人としてぬくもりとかすばらしい方だったのでしょうね
by うしさん (2010-02-17 12:02) 

Allora

少し明るい話題で、お宅のご家族の様子が垣間見えた気がしました。
奥様も順調に回復され、家に帰れるようになるといいですね。

帰ってこられたら、またmiyataさんの介護生活が始まるという事でもあるのでしょうが・・・
by Allora (2010-02-18 21:47) 

miyata

うしさん、おはようございます。
もし病気をと考えたら、やっぱり絶望的な壁だったと思います。ただその壁を仕事の中で意識し続ける辛い人生を送ったでしょうね。あ、どうも今も忘れてないようですけど。
おばあちゃんはけっこう厳しい方で、可愛がってくれたけどもよく叱られたとのことです。お灸をすえられそうになった時は逃げたと言っております。
by miyata (2010-02-19 06:42) 

miyata

Alloraさん、おはようございます。
おかげさまで、今日リハビリ病院に転院します。百万遍の方です。ここでどれだけリハビリの効果が出ますやら。
今年の私のテーマは「介護生活」からの脱皮です。「介護」をただの日常語である「世話」に転換させようと思います。抽象的で実は私にもよくわかっていないのですけれど(^^ゞ
by miyata (2010-02-19 06:48) 

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