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四人部屋に移る [介護と日常]

気管に挿管されたチューブがとれ、酸素もなくなった。一気にこちら側にやってきた。そして、重病患者用個室から四人部屋に引っ越した。
「安心してもよいですか?」と聞くと、「安心ではなく、安定してきたので大部屋に移させてもらいました」と看護師は答えた。

意識はない。だが、目を開けるようになった。呼びかけに応答はない。どこかまだ迷っているような頼りなさを感じさせるが、もう大丈夫ではないかと思う。もちろん安心はしていないし、何かが起こったときの覚悟はしている。

ほっとしている。肩の荷が下りるとはこの事かと思うほど。

息子が看護師に訊ねられたそうである。「今後どうお考えですか?」と。息子はきょとんとして「は?」としか言えなかったそうだ。ひょっとしたら、私たち家族があまりにもあっけらかんと喜んでいる事が心配なのかもしれない。看護師が訊ねようとした背景はよく理解している。ほんとうの大変さをたしかに理解していないかもしれないが、今の状態のままで家に連れて帰ることもとうぜん、想定の範囲である。

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無題 [介護と日常]

入院してからまもなく、あり得ない三週間目が近づいてきて、ようやく変化が見えはじめた。
危機的な血圧低下に対して、投入された薬に体が反応が出来ないでいた。それほど体が弱っていたわけで、強い薬を目一杯投与していたものの、このままでは心臓が持たなくなるギリギリのところで、血圧が戻りはじめた。心臓に負担が大きいイノバンという薬の量もやっと減り始めたのだが、今日その薬の投与を終えたと告げられた。血圧はそれでも100前後を維持してくれている。

昨夜病室で子供達と一緒になり、久しぶりに三人で居酒屋に寄った。咳で噎せ、苦しそうな表情に甦ろうとするエネルギーを感じ取った安心からだった。やはり、生命にはエネルギーが宿っている。今まで妻は何度も入院したがそのエネルギーがまったく感じられないのは今回が初めてだった。

医師から危篤が告げられたとき、医師は「むしろ、奥さんのように重篤な下垂体障害を負っておられるのに10年も生存している事実に驚いたのです。今までが本当にギリギリで生きてこられたのだと思います。1月に診させてもらったときの安定が実はそういうことだったということでしょう。私が奥さんのことを覚えているのは、下垂体障害なのに、どうしてこんなに安定しているのかという驚き、そういうことが前提にあったからです」と、言った。私はその時自分の希望を伝えることを断念せざるを得なかった。すでにその時妻は仏様のような顔をしていたのだった。

外は曇っている。まだ外は寒いが、街のあちこちに春がひそんでいるのが見えはじめた。
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無題 [介護と日常]

朝から雪がちらちらと舞っている。寒い。妻は二日前より輸血が始まった。残るは人工呼吸器だけと言われていたので、まだ打つ手があったのかと逆に安心する。体が弱っていると苦しむ元気もなくなるのだと知った。咳はもちろん、発熱すら出来ない。だけど、妻は生きている。おそらく医師の予想を超えて命を繋いでいる。このまま意識は戻らないかもしれないが、3月の末に引っ越す新居に出来れば連れて帰りたいと思っている。
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2012-02-07 [介護と日常]

ずいぶん長いあいだ留守をしてしまいました。

突然ですが、妻は死ぬかもしれません。
いま、死の隣で疲労困憊して喘ぎながら休息しているところです。

二月三日午前六時五十分に、痙攣の発作を起こして病院に入院しました。診断名は「症候性てんかん」。二次性てんかんともいうそうです。
血圧が低下し、肺炎も併発して危篤状態となりました。また、六日に軽い脳梗塞を起こしました。一見はおだやかに眠っているようですが、体の余力が残っていないようなのです。肺炎になっても熱を出して抵抗する元気もないということのようです。

今日七日、救急救命室から脳外科病棟の個室に移りました。出来るだけ時間に制約されずに家族と長くいられるようにという病院側の説明でした。
妻はいままで大きな怪我を何度も乗り越えてきましたが、さすがに今回はあまり元気がありません。てんかんの発作は負担が大きすぎたかもしれません。くも膜下出血後の患者にてんかんの発作がわりあい起きることは最初の手術後の後も聞いていましたが、この時期に起きるとはわかりませんでした。

すこし予兆があったといえばありました。一月十六日、顔がすこしむくんでいるのとときどき誤嚥があり、また夜の独語が多くなりすこし呂律もおかしいのでいま入院している病院の脳外科に(最初の手術をしたところ)久しぶりに行き、脳のCTや、電解質のバランスなど全部を調べてもらいました。この時の血液検査の結果は、驚くべきもので今回も診てくれている医師が「信じられない、外来に来ているどの患者よりもいいくらいだ。下垂体障害の患者のホルモンバランスが投薬もなしに安定するなんてあり得ない」と驚嘆の声を上げたのでした。

気になった誤嚥に関しては、いつも往診してくれる診療所が専門家を派遣してくれて、いろいろテストをしてもらったところ、まったく問題なしで筋肉の量も充分にありまだ若々しいので良く運動するようにとまで言ってくれました。
また、前日には往診があり、妻もにこやかに医師に応対していたのでした。

むろん希望は捨てていません。ただ、ゆるやかに死の方に歩んでいこうとする妻のそばにこれから出来るだけいようと思います。
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昨年の10月24日、子供たちが還暦の祝いだということで昔よく行った伏見区の韓国料理店に招待してくれた時の写真です。これはほんとに久しぶりの外食で、妻もとても喜んでいました。画像は娘の携帯なのであまり良くありませんが、良い表情だと思いました。

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