今だけサッカーに夢中

サッカー、ワールドカップの決勝トーナメントが早くも始まった。
ドイツはスウェーデンに2対0で勝ち8強に駒を進め、今アルゼンチンとメキシコが始まった。まるでほんとのサッカーの試合が始まったというような感じである。月末仕事の締め切り作業に区切りをつけながら早く寝て明日効率的に進めようと思ってもなかなかテレビが消せない。歯痛の方はずいぶん回復してきたので天国にいるような気分だ（笑）。
日本とブラジル戦、今日のスポーツ新聞を読んでいるとスペインとかイタリアの専門誌にブラジルはエキシビションマッチで決勝リーグの調整をしたと書かれていたり、真珠湾攻撃を持ち出して日本を揶揄していたそうで、まったくそんな風に書かれても腹が立つより苦笑せざるを得ないほどブラジルは強かった。死力を尽くしても及ばない世界があり、精神論では埋めようがない。サッカーの奥深さを見た思いがする。

ところでNHKのヒューマンというニュース番組なのかよくわからない番組の最初だけ何気なく見ていたら、試合終了後ピッチ上で長く動かなかった中田英の姿に感動してネットでは「日本人の美意識を感じた」などの書き込みがあるのだという。私は思わず「へえ〜」と思った。やはり世代も違うと感じ方は一変するらしい。私などの感覚では敗北を受け入れた時は逃げるようにその場から去り、絶望と屈辱にうちひしがれて人知れず泣くという方がずっと理解しやすいのだが。

敗戦後の各選手のインタビューではGKの川口が良く戦った者の表情をしていると思った。
うーん、とこれは選手をおとしめるようで書くまいと思ったが正直に書くと、ぶっ飛んだのは先取点を挙げた玉田のコメントだった。ブラジルを本気にさせてしまったかもしれないという自画自賛と自己中としか思えないコメント。あ、これはあくまでも私が瞬間感じたことで、私の感じ方がおかしい可能性は大いにある。気分を害された方がいたらお詫びする。
それにしても、この試合の日本のプレーで美しく素晴らしいと思ったのは玉田のゴールに繋がった稲本から三都主へのロングパスだった。相手ディフェンダーの間を絶妙とかのレベルを超えてまるでサッカーの神様がそこだけを許して導いたようなパスだった。あの瞬間だけは「ウワ！」っと声が出てさぶいぼが出た。サッカーではないが同じようなシーンを思い出す。かつてのトライアル世界チャンピオン、テリー・ミショーが誰も登れない斜面を天から導かれるようにスルスルと上がっていった時だった。まさに神懸かりとしか思えなかった。

WC関連のニュースで面白かったのは開催国ドイツで大会期間中に海外の観光地に行くツアーが流行しているというもの。サッカー嫌いの奥さんが家庭も顧みずサッカーに熱中する亭主のもとを離れて普段行けないような観光地に出かけるというもので結構人気があるのだそうだ。さもありなんと笑ったが、日本では大会中にサポーターなどが打ち振るう国旗が四六時中テレビで氾濫するのに違和感や嫌悪感を感じて日本の試合も見ないようにする人もいるのだそうだ。これまたわからぬでもない。なんでもクロアチア戦で引き分けに終わった瞬間に万歳をした女性サポーターが週刊誌で非国民呼ばわりされているのだそうだ（確認してません）。週刊誌の悪のりは今に始まったことではないが、呆れる。

WBCの時にも書いたが、スポーツへの熱狂をナショナリズムに置き換えて利用するのは思想と政治であってそのスポーツやプレーヤーに帰せられるものではない。仮にプレーヤーが熱狂的な愛国者であってもそのスポーツに責はない。スポーツ原理主義の立場から（そんなのがあるとすればだが）言わせてもらえば、利用する側もこの状況に違和感や嫌悪感を感じて見ないようにするのも同義でありパラレルなのだ。もちろん、関心がないのに持てなんて事は言わない。スポーツ原理主義の立場は自発的であり、自己発現する上に置いて自由であり、その条件においてインターナショナルであり、国家や企業など（あ、これに電波というかなんでもバラエティーにしたがるマスコミ）の干渉を最小限にとどめる領域をいうとでもしておこう（笑）。

昔、高校生になった頃の話し。夏休みを利用して京都の大学にいた兄の下宿に遊びに来ていた時のことだった。兄がアルバイトに出かけた後ひとり部屋で野球を見ていると同じ下宿にいた人が突然部屋にやってきた。簡単な挨拶の後、野球に熱中する私に「昔長嶋がね、社会党が政権を取ると野球が出来なくなると言って皆の失笑をかったことを知っているか。長嶋は反民主主義の思想の持ち主であって、こんな低俗な人間がするスポーツなどにうつつを抜かしていてはいけない」といきなり説教を受けた。この人は日本で唯一と標榜する前衛政党の（もう死語かもしれない）活動家であることは聞いていた。時代が時代であるので同じ下宿に全共闘の活動家の人もいたりして絶妙というか微妙な緊張感と時代性が刺激的に充満していた。私はこのいきなりの説教に驚いたが、それはあんまりな意見ではないかと抗弁した。「長嶋がどんな考えを持とうと野球とは関係ないし、長嶋の考えと長嶋の素晴らしいプレーとは関係ない」と。だけどこの人は有能な雄弁家というか理論家だったらしく私はいともたやすく言い負けてしまい、最後には日本の未来のためにもっともっと勉強をしなさいとまで言われてしまった。この話を兄にするとただ笑っているだけだった。その後も兄が出かけてひとりになるとこの人は部屋にやってきた。どうやら私は彼の祈伏対象だったようだ。だけど私は正直辟易していた。この人を避けるために兄がアルバイトに出かける時一緒に出掛けて河原町や寺町、新京極をうろついて時間を潰してから帰るようになった。兄に連れて行ってもらった事がある店にドキドキしながら入り、一人喫茶店でコーヒーを飲むという秘かな楽しみを発見したのもこの頃で、今思い出すと懐かしい。ジャズ喫茶のシャンクレールに、自殺した高野悦子の「二十歳の原点」にも書かれていた六曜社、裏寺町にあった花房など。夏休みが終わり田舎の学校に戻ると自分だけが皆の知らない世界を知ってるぞというような他愛のない優越感に浸ったものだった。
思いっきり話がそれた。たかがスポーツ、思い思いに楽しみましょうということを書きたかった。

完全に日が変わってしまった。それにしてもメキシコとアルゼンチンの試合は面白かった。
これから朝食の支度をして、妻が落ち着いたら仕事の仕上げをすることにしよう。
今夜もさらに熱戦は続く。

コメント 15

日本人とサッカーの関係は、未成熟のような気がします。miyataさんの話、納得です。
by Silvermac (2006-06-25 11:18) 

こんにちわ♪
痛みが軽くなったようで良かったですね。
でも、時間を作ってでもしっかり原因を取り除かなくては、又、再発してしまうかも…

サッカーの報道振りを見て、この前の冬季オリンピックのモーグルの事を思い出してしまいました。
日本ではかなりの成績を収めていて、すっかり世界に通用すると勘違いするような報道。　結果は…
サッカーも決勝リーグになって、さすがと思わせる試合ですよね。
日本もあの中に入れるよう、実力がつくのはどのくらいかかるかしら？
by honnoridesu (2006-06-25 12:17) 

監督、戦術、個々の選手にあれこれ素人談義に花を咲かせるのもＷ杯ならでは。中田以外のちょっと仲良し子良し的な雰囲気、若手の大抜擢がなかったので２０１０年もちょっと心配。アテネに続いて、マスコミが日本の実力以上にあおりすぎだと思いました。
やはりベスト１６になるとどこも技術的にすごいですね。ワンチャンスをものにし、いかにミスしないか、どこの国でも見応えはありますよね。
by (2006-06-25 17:40) 

SilverMacさん、こんばんは。
サッカーだけに限らず、日本はスポーツに対する成熟度が低いのかもしれません。
by miyata (2006-06-26 02:48) 

ほんのりさん、こんばんは。
ああ、そうですね。おっしゃるとおりまさにモーグルですね。
ひどいもんですね、日本のマスコミって。こんなのがいつまで続くんでしょうか。
私はバレーも好きなんですけど、全然知らない子供のタレントが出てきて応援なんか始めると、もう見たくなくなります^_^;

いつになったらあの中に入れるか・・・。個人競技なら割合短期間で可能だというのは証明されているジャンルもあります。けど、義務教育すら無視するとかそれなりに過酷な犠牲も必要になったりしますし、継続性に関しては疑問一杯です。
でも、サッカーはねえ。アルゼンチンとメキシコの試合を見ていて思ったのですが、フィジカルとテクニックが追いついて、うんと距離は縮まるとは思いますがああいうゲームを同じ土俵で出来るのか、考えさせられました。
by miyata (2006-06-26 02:58) 

タケノコさん、こんばんは。
ほんとに決勝リーグになると試合が一変しますね。
ところで、中田なんですがまさに中心であり、献身的な働きをしたと思いますが、ピークを過ぎたんだなあと思ってしまいました。
テレビはNHKも含めてひどかったですね。もうちょっときちんとした解説が欲しかったですね。岡ちゃんこと岡田元代表監督がブラジル戦に勝つ方法を聞かれて「ジーコがブラジルに電話する」といった時は笑いました。それくらい絶望的状況だというのは専門家はみんなわかってるんでしょうけど。そりゃあそうですよね。素人でもわかるわけですから。私はこの岡ちゃんのファンですが（笑）。
でも、代表チームは次の南アフリカ大会にぜひまたこの楽しみを与えて欲しいですね。
by miyata (2006-06-26 03:09) 

miyataさん、こんにちは。
現在の状況はサッカーとかスポーツだけでなく、全てに言えることと思います。
何かひとつのことがあると、一斉にそれだけに傾いてしまう。
現実を見ずに、希望的観測をあおってしまうだけ・・単純な私でも、分かるくらい。
TV、新聞、マスコミ全般がそうです。それと街角でインタビューとか、コメンティーターとかも必要ないですよ。
良い思い出が、京都に沢山おありですのね。
私は、新宿・原宿かしら（田舎から行きましたからね）・・・懐かしいです。お体、ご自愛下さい。
by シマリス (2006-06-26 16:37) 

私も納得
人前で寝転んだりせずに
応援の人々に感謝の姿があってもいい
努力は認めて温かく迎えましたが。
by (2006-06-26 23:31) 

シマリスさん、こんばんは。
そうですね。ほんとに怪しげな段階にすでに突入していると感じます。でも、私は全ての人がそうではないはずだ、多くの人はシマリスさんのようにきっと冷静な目と判断を持っているのだと信じたいです。

京都にはいろいろな思い出があります。もちろん抹殺したい思い出も数限りなくあります(__;)
by miyata (2006-06-27 02:39) 

なかなかないさん、こんばんは。
ははは(;^_^A アセアセ…
ま、中田はそれこそ獅子奮迅の活躍をしたことは事実ですから、まずはご苦労さんと思いました。それはもう好き嫌いを抜きにして掛け値無しにそう思いました。でも好き嫌いということで言えば、私は昔から中田は嫌いでした。いっちゃった・・・(^_^;)＼(・_・) オイオイ
by miyata (2006-06-27 02:52) 

ウワ～眠い！でもフランス：ブラジル面白かった。
もし、もし、日本がここまで来れたとしても、こてこての体力不足でへたってたね。
此処まで勝ち抜いてくる体力、気力、技量ジャパンにはまだまだ無理
4年後どんなジャパンサッカーを見せてくれるかあのオシムに期待！
まだまだ眠られない日々・・・でもワクワクする気持ちこれ終わったら今
by tomoko (2006-07-02 12:10) 

ともちゃん、こんにちは。
ブラジル負けちゃったですねえ。でもフランスが勝ってジダンファンにはたまらない展開ですね。WCもいよいよ佳境ですね。
ジャパンはどうでしょう？協会も含めた取り組みが必要で、福島に出来たアカデミーなど長期的な育成計画のもと早くて10年後・・かな？それとも時間的には今の代表選手の子供世代にならないとどうなのかわからないと思いますよ。音楽でも三世代かかるっていうじゃないですか。サッカーというスポーツはそんな気がします。
by miyata (2006-07-02 15:43) 

真面目にお答えいただきありがとうございます。
先ほどのメール途中で切れてしまって、書き直そうとしてみたが解らない？トラックバックも出来なくて四苦八苦(*￣o￣)ゝ何とか成るとゆうのが私の悪いくせで、つっぱしっています。（出来ないままに）
最近チョッピリ駆け足にはなったけどね、
　毎日雨だけどＮ子さん元気お散歩出れなくてつまらないのでは・・・。私はプライベートな事が忙しくて、ベガルタ応援もさっぱりです。
サポーター席でわいわい声張り上げているのが結構ストレス解消につながっています。ヾ(＠°▽°＠)ﾉあはは　
（何か送ってほしい物私のブログにコメントください）
by tomoko (2006-07-02 16:09) 

中田引退を表明。
やっぱりかー。最後のＷＣだと思ってたからなのかな。
それとも、長く寝っ転がっているときに決心したのか？
すくなくとも「疲れたから」ということは選手は言うべきではないと
思うから、その時には心は決まっていたんだろうな。
by 練習菌 (2006-07-03 21:16) 

練習菌さん、こんにちは。
引退しちゃいましたね。まあ、サッカー人生よりこれからの人生の方が長いわけで、いいんじゃないでしょうか。特に感慨はないなあ・・。
でも、健ちゃんや小川、藤波が引退するときは人知れず泣くかも(^^ゞ
by miyata (2006-07-04 16:11)