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生まれ故郷での展示会・その二 [介護と日常]

今日(昨日)、ようやく妻の入れ歯が出来上がった。とても嬉しい。表情も一変したようにキリッとした感じがする。とても長かった。二ヶ月以上もかかっている。微調整も含めてあと数回受診があるが肩の荷が下りた感じだ。夕ご飯の内容も皆と一緒。問題なく噛めるようで妻も嬉しそうだ。これで、やっと料理の苦労から解放される。おまけに、血液検査の結果も今回は良好。点滴も無し。今まで買ったことがなかったボジョレーを宣伝文句に負けて箱買いしてしまったので、祝いも含めて久しぶりに家で「やるかー」という感じ。

さて、息子と甥が作品を展示したのが「なはり物語館」というほんとに普通の民家を改築したところ。ながらく空き家だったところを浦の会が管理を委託されてきれいにして、普段はお遍路さんなどに解放しているらしい。古いと言っても昭和だろう。田の字型のしきりの間取りは敷居を外せば広間になるし宴会などには便利。日本の民家は昔から普通にそういう工夫がどこでもされていたと思う。
『若手陶芸家「二人展」』という看板を見て思わず息子に「これ書いたのはお前か」と文句を言いかけたら「看板がないといかんろういうきにゃあ、おらが書いたがよ。ええ味がでちゅうろが、miyataよ」(翻訳:看板がないと駄目だろうというので私が書いた。なかなか良いでしょうが)と、後ろから声がして振り返ると幼なじみの同級生。今は町会議員さん。口に出かけた文句を飲み込む。
中にはいると、持って行ったものが全部展示されていた。ちょっとイメージが違うなと思って聞くと、最初全部の品物を展示するのではなく、京都的に、もし売れたら追加したり別の品物を展示しようとしていたら、いきなり怒られたのだそうだ。「そんな汚いことをするな。持ってきたものを全部並べて見せろ。それで見に来た人に選んでもらえ」と。それを聞いて大笑い。それはそうだ。面倒なこともなく合理的だ。奈半利らしい。息子はいきなりカウンターパンチを受けたようだ。

息子達は私の同級生達にあちこち連れて行ってもらったらしいが、とにかく会話がいつでもとても考えられない展開を見せ、吉本のボケと突っ込みどころではなく唖然としたそうで、今でも思い出したように涙をこらえて(可笑しくて)その思い出を語るのである。とにかく遠慮なく相手をくさす。そのくさしかたがすごくて真似できない。興が乗ってくると相手の話を聞かない等々。
高知県人の議論好きは司馬遼太郎も書いている。だけど、奈半利はまた少し質が違うような気がする。高知市に近付くとそれなりに上品で、議論の仕方もスマートになっていく。奈半利より安芸市になるとうんと大人しく、少し理知的になるがまだまだ田舎っぽい。南国や高知市になると私から見ると穏やかで上品である。そこから西は知らない。
今、NHKの大河ドラマで功名が辻をやっているが、山内一豊が高知への入部に際し実際は海路ではなく途中野根から野根山街道に入りそして奈半利を通って高知入りしたのである。ところが司馬遼太郎の原作では和歌山を経由して直接船で浦戸湾から高知入りしていることになっている。ドラマでも原作同様になることを聞いた奈半利の人達は怒ったらしい。実際の史実をねじ曲げるとはけしからんというわけだ。どのように話がついたのかは聞いてはいない。奈半利が最初から山内に恭順を示していたのか、抵抗する一領具足の根城であったのかも知らない。ただ、入部に際してこの街道を改修した功を持って山内家から拝領した広大な山を管理する組合が今も残っている。

4日の夕方、この展示会場で浦の会の人と友人達が宴会を用意してくれていた。友人宅で休息した妻も少し回復してこの宴会に参加。皿鉢料理に鰹のタタキなどの郷土料理を堪能した。ところで宴会の準備をしているときにすでに出来上がった人がいて、私の友人と話をしているのか議論をしているのか喧嘩をしているのかわからない様子である。どうやら別の婚礼の宴会の続きにこちらに合流したらしくて、いきなり盛り上がっている。皆との掛け合いがなんともおかしい。田舎の宴会は皆が揃うまで飲んだり食べたりを待つということはない。来た人が座った時点ですでに飲み食いがはじまっている。最初に出来上がっていた人は聞けば町会議員さんとのこと。感心した。
私の感覚では宴もたけなわというところで、乾杯があり、息子と甥が挨拶をさせられた。これが意外と立派に話すもので、思わず自分の時代はすでに通り過ぎているのだなということを実感させられた。妻も楽しそうに料理を口に運んでいる。もともと賑やかな場所が好きなのだ。私は二次会でなんとか日が変わる前に解放してもらい、泊めてもらう友人宅でうなされるように寝た。

明けて5日。快晴だった。もう暑くてじっとしていても汗ばむ陽気だった。実はこの展示会のことをSilverMacさんにお知らせしてあった。すると足を運んでくれるという。MLなどでは通称オフ会は何度も経験があるがブログでは初めてでお会いできるのが楽しみのひとつだった。SilverMacさんとViolaMacさんご夫婦が見えられたとき、すぐにわかった。第一の理由は、お二人とも洒落ていてあか抜けしていたからだ。お二人は想像していたより(ごめんなさい)うんとお若く見えた。私の娘も私から年を聞いて「それは信じられない」と言っていたからお世辞ではない。短い時間だったがいろいろと楽しいお話しを聞かせてもらった。目的のひとつを達成できて充実感が広がった。SilverMacさんViolaMacさん、遠いところを来ていただき、ほんとうにありがとうございました。

午後になって友人に海が一望出来る高台を案内してもらい、それから海岸に出て故郷の海の香りを満喫して、娘と妻と三人で奈半利を後にした。中国自動車道の渋滞が心配だったが、高速にはいるまでの県道がずいぶん混んで満月を見ながら高速の入り口にたどり着いた時はすでに7時を過ぎていたので、高速の渋滞は心配することもなく無事京都に着いた。妻はやはり車の長旅はまだ無理のようで、もうほんとにぐったり。抱えるようにして家に入り、すぐに布団に入った。その日は私も娘も早々と寝た。

高台から見た奈半利の町。この写真は昨年のもの。今回の出かけた場所ではない。

展示会の看板が立派な板に無造作に書かれていた。現職議員の手になる、自称「味ある看板」なのだそうだ。

入ってすぐの土間に昔の生活用具と共に並べられた息子達の作品。

玄関の土間に置かれていた脱穀機であろうか。昔友人の家で見たことがある。

展示会に見に来てくれた地元の人達。

カメラを向けると、ちょっと待ってと制して、思いっきり表情をつくってくれた妻。残念ながら歯がなくてまるで山姥みたい(笑)。


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コメント 20

左膳

大河ドラマでは、今週の放送分で土佐入りするようですね。
地元の人にとっては、史実と違った形で放送されるということに
怒りを覚えるのでしょうか?
高台から見た奈半利の町綺麗ですね。
by 左膳 (2006-11-15 10:35) 

練習菌

ありゃー、奥様痩せられましたねえ。やはり食べるのが大変だったんですね。
いろいろ混ぜて工夫してられたんだろうと、生きる力に感心してしいます。
農具は唐箕のように見えるなあ。
看板は1枚板ですかあ。すごいなあ。都会では無理ですね。
by 練習菌 (2006-11-15 12:31) 

miyata

左膳さん、こんにちは。
そのようですね。奈半利は偉い人が怒ったそうですよ。
功名が辻・山内一豊を巡っては、高知新聞紙上で県民の意見が二つに割れたかのような大論争があったそうです。
支配・被支配の関係って400年を超えても消えないんですね。驚きました。こりゃあ、ちょっとした理想論でうかつに世の中のことに口出しすると痛いしっぺ返しをくらうなと、その時は思いました。
by miyata (2006-11-15 14:00) 

miyata

練習菌さん、こんにちは。
そうそう、とうみ。それですよ!籾殻とかゴミを吹き飛ばす奴です。
女房は痩せてないんです。歯がなくなった分ほっぺたが落ち込んじゃったんでしょうね。
看板、すごいですよね。モミの一枚板でした。それにあの字ですからねえ。息子だったら下手は下手なりにもっとまじめに書け!と一喝してやろうと思ったんですが(;^_^A アセアセ…
by miyata (2006-11-15 14:08) 

土佐湾

こんな催しが有る事を隣町に居ながら全然知りませんでした
息子さん達の作品を拝見出来る良い機会でしたのに本当に
残念に思います。昔ながらの土佐のお料理や懐かしいお友達と
再会できて良かったですね。
by 土佐湾 (2006-11-15 19:42) 

Silvermac

ご家族お揃いで生まれ故郷土佐を楽しまれたとのこと大変嬉しく思っています。miyataさんを中心にしたご家族の絆の強さを実感しました。ご子息、甥御さんの二人が陶芸の道に入られたのは血筋ですね。こちらに帰られる際には声をかけて下さい。ひろめ市場等ご案内します。ご家族の皆様に宜しく。
 追伸:奈半利の町並を回ってみました。良き時代の日本が残っています。
by Silvermac (2006-11-15 21:06) 

練習菌

看板の字は、スプレーで吹いたように見えるのですが〜
まあ、展示会が終われば、鉋をかければまた使えますよね。
一番の衝撃は娘さんがパンプス履いてる事。(^_^;)\('_') ォィォィ...
奈半利をグーグルアースで見てみると、山の稜線に沿ってなにかいろいろ
建っているような。
by 練習菌 (2006-11-16 02:24) 

素晴らしい展示でしたね
閑のあるときならば
電車で伺ったものですが
miyataさんの飾らない表現が
大好きです
奈半利には高校時代の友人が嫁いでいます
又友人の息子さんが歯医者もしています
友人のご主人も歯医者さんでしたがお亡くなりになって今は友人は高知市にいます。
いつか拝見させてくださいね。
奥様の歯が完成おめでとうございます。
by (2006-11-16 09:32) 

シマリス

miyataさん、おはようございます。
奈半利の町と海、素晴らしく綺麗ですね。海のないところに生まれてから住み続けている私には、海の見える風景は憧れです。
見飽きることがありません。
miyataさんのさりげない文章からも、この町を家族揃って訪れることの喜びが伝わってきているように思えます。
奥さまもお出掛けできて良かったですね。山姥みたいなんて失礼な!歯も入れることが出来て良かったです。今夜はもうやってしまって下さい、もう終わってしまったでしょうか。。。
by シマリス (2006-11-16 10:08) 

miyata

土佐湾さん、こんばんは。
奈半利では親子共々とても温かい歓待を受けて、感動しました。
息子に聞くと、また呼んでくれるそうですから、その時はここでお知らせします。
by miyata (2006-11-16 19:33) 

miyata

SilverMacさん、こんばんは。
紆余曲折はありましたが、なんとかここまでやってこられました。
SilverMacさん他、皆さんの温かい励ましのおかげです。
ひろめ市場ぜひ行ってみたいです。その時はよろしくお願いします。
by miyata (2006-11-16 19:38) 

miyata

練習菌さん、こんばんは。
は?スプレーに見えますか?
写真が悪いんでしょう。パンプスってなんなのかよく知りません。後で調べてみよう(..)。山の稜線に建っているのは道と集落でしょう。風力発電をするという話もあったそうですけど、意外や意外、調査の結果あまり充分な風が吹かないようです。
by miyata (2006-11-16 19:48) 

miyata

なかなかないさん、こんばんは。
>いつか拝見させてくださいね。
ぜひぜひ。
奈半利にご友人がおられるとはびっくりです。歯医者さんで同級生がいるんですけど、ひょっとしてお知り合いかもしれませんね。

>奥様の歯が完成おめでとうございます。
ありがとうございます。奈半利行きに間に合えば良かったのですけどね。いずれにしろ、とても嬉しいです。
by miyata (2006-11-16 19:51) 

miyata

シマリスさん、こんばんは。
>山姥みたいなんて失礼な!
やっぱり(;^_^A アセアセ…

海は大好きです。海辺で育ったということがいろんな事に影響してるんだなということを感じ始めたのは最近の事です。でも、山もあこがれます。ボジョレーで乾杯はこれからです(^^)v
by miyata (2006-11-16 19:58) 

suzune-k

こんにちわ
なはりですか。四国は全然分かりません。松山に行ったことがありますが、観光気分でしたね。綾歌に妹がいて行った事があります。
大歩危・小歩危に行ってあの橋が渡れずに気絶したことがあります。
前世の最期に崖から飛び降りたせいと言うことでしたね。
陶器は良く分かりませんが、自分でいいなと思ったものを買っています
。作家ものは高くて手が出ませんが、自分の好きなものをこつこつ揃えていきたいですね。
by suzune-k (2006-11-17 15:23) 

息子さんたちも陶芸の方だったのですね。これは奥様の血筋でしょうかね^^miyataさんも長距離の運転お疲れ様でした。故郷のこのような展示会に招かれるのも何かの縁なんでしょうね。二人展の文字は、やはり毛筆調の方が良かったですかね^^
奥様の後ろが息子さんでしょうか。
by (2006-11-17 22:28) 

miyata

すず音さん、こんにちは。
かずら橋ですね。あれは怖いでしょうね。私も二度渡ったことがあります。その時はちょっと「おお〜、こえ〜」というくらいで、笑いながら渡れたんですがね。今はどうでしょうか。ちょっとゾクゾクするけど問題なく渡れると思います。その前だったら、すず音さんと同じく、気絶でしょうね^_^;
陶器、お好きなんですね。自分の気に入ったものが一番ですね。
by miyata (2006-11-18 00:12) 

miyata

タケノコさん、こんばんは。
血筋なんでしょうか。子供達は生まれた時から、既製品ではない器に囲まれて生活していたので、仕事として選びやすかったというのはあるんだろうなと思います。
女房の写真の後ろは息子です。非常に息子に評判が悪い。ま、私ももう少しスマートな感じがすると弁護しておきます(笑)。女房がすぐに転けそうになるので、手を差し伸べて用心しているところです。
by miyata (2006-11-18 00:23) 

練習菌

確かに丸っぽく、老け顔にうつっているなあ。
手前のアップの頭に空間が有るように見えるのは
気のせいであってほしいなあ。
by 練習菌 (2006-11-18 02:08) 

miyata

それでね・・ぷぷ。髪型がキムジョンイルみたいだといったら、本人動揺して髪を切るらしいです。帽子をかぶるとこうなるんだと言い訳してましたけど。
手前頭空間は、親に似てくっきりと二つ「つむじ」があるんです。
円形型空間はわが家では男にしか現れないようでして・・・(__;)
by miyata (2006-11-18 13:19) 

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