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調子が上向かない [介護と日常]

妻の足萎え状態が回復しない。22日夜から少し発熱したのでアイスノンで冷やし、市販の熱冷ましを飲ませたが23日朝になってもまだ熱が下がっていないので、病院に行くことにした。階段を負ぶっており車いすに乗せる。駐車場まで押していって、車いすから乗せ替える。病院に行き、逆の動作をする。車いすに座らせたまま、病院の案内カウンターで一時預かってもらい、車を駐車場に入れる。受付では血液検査のオーダーが出ていて、血液検査を受ける。それから、担当医ではないが脳外科の若い医師に診てもらった。足萎え状態について、CT検査を受け脳に大きな変動はないことを確認した。血液検査の結果は、炎症値は高くないので電解質のバランスが崩れていることと、脱水が原因だということになり、点滴治療を受けて帰ってきた。

今、私はまったく新しい介護の経験をしていることに気がついた。それに気がついたのは、左背筋と、臀部の強い筋肉痛によってである。食事も排泄もすべて布団から妻を抱えなくてはいけない。妻が倒れてから、起立の手助けをしたり、手を添えたりはいつもやっていたことだが、全身を抱えたり支えたりする介助は経験がなかった。これをやり始めてわかったことは、家の中が実に障害だらけであるということだった。トイレは入り口が狭くて妻を抱えた状態では入りづらい。ドアというドアが狭い。ドアというドアがじゃまだ。妻がどこからか買ってきた食卓の椅子は、不快になるほど下らぬ意匠の椅子だということもわかった。手が出せないというときに限ってカットされた背もたれが、先端にRをつけた肘高が衣服に引っかかるのだ。癇癪を起こして思わず放り投げたくなってくる。

筋肉痛は、不意にやってくる腰痛への不安につながる。布団から起こすとき、向かい合わせで抱擁するようにして立たせるのだが、ここまではテコの原理などでさしたる苦労はない。問題はそれからの歩行と途中で急激に力を抜く脱力攻撃である。脱力した人間の重さは半端ではない。以前、柔道の専門家にオリンピック前の無敵の井上康夫と山下泰裕と戦ったらどちらが強いかを愚直にも聞いたことがある。そうするとその専門家は、井上は山下を投げることが出来ない。従って山下には勝てないと答えた。理由は、山下は試合できれいに投げられたことは一度もなかった。彼は相手が投げようとする瞬間を察知して、ただ一人だけ脱力できる柔道家であったと彼はいった。脱力されると人間の体は非常に重い。相手は投げられない。だから負けない。この話を思い出すほどに、妻の脱力は驚異だ。

脱水状態を抜け出すために、頻繁に水分をとらせるのだが(ご飯も半がゆ状態、お茶漬けに近いもの)それとひきかえに排尿も多くなる。記録的なおむつ消費だ。こうなると、ベッドがあった方が楽だったなとか、ポータブルトイレを入れた方がよいのではないかとか悩みはじめている。キャスターのついた椅子があると便利だなとか思うのだが、そうなると家の中の段差がじゃまになる。

太田仁史、三好春樹の監修・著作の大きな本「完全図解 新しい介護」という本がある。たいへん参考になる本なのだが、歩けない人と一緒に歩く方法というのは書いていない。車いすへの移動とかポータブルトイレにベッドから移動する方法止まりだ。すぐに道具を入れた方がよいとは思うのだが、今の状態を固定化したくないという気持ちも強いので(回復を信じているが、回復してしまうと導入したものが無用のものとなってしまう)自分で工夫するしかない。
妻が力が入れられずにへたり込むときは、必ず前の方向に膝が折れて崩れ落ちる。これを両脇に手を入れて支えていると、こちらも中腰になってしまっていて、いずれ腰を痛める。そこで参考になったのは、今新しい横綱誕生かで話題になっている大相撲である。上手、下手、引きつけ、かいなを返すとか、組み手やまわしに関するテクニックであった。人間の重心とバランスは腰を中心に保たれているようだから、まわしを掴むようにズボンの腰を掴み、腕を引きつけて少しだけ上方向に絞るようにする。そうすると、相対して抱擁するように抱きかかえて後ろ向きに(私にとっては)歩行を誘導するよりもずっと楽に歩行を介助できることがわかった。こちらのポジションも相手の横に位置するので、片方の手が自由に使えて融通が利く。少し格好が悪いが、介護用のまわしなんかが売り出されないものかなどと思ったりする。

話は変わって、ケアマネがやってきた。妻の状態が悪いと聞いて、彼女は殊勝にも何かお手伝いできることはないかと聞いてきたが私には時間以外思いつかなかった。デイケアは今月1回しか行っていないし、ヘルパーさんも週に1回ないし2回なのでほとんど妻にへばりついた状態なのだ。で、彼女の口から出てきた事は、「困りましたねえ。奥さんの状態が悪いとなると入浴介助もヘルパーだけでは無理だし、お買い物にも行けないし、やることがありませんね。しばらくお休みするか、時間を減らしましょうか」だった。「どうぞ、良いですよ。よろしくお願いします」とこちらは答えた。作ってきたケアプランは従来通りだった。このケアマネ、そうとう根に持っているなと感じた。


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シマリス

miyataさん、おはようございます。
脱水症状からもそのような状態になることがあるのですね。
点滴をされてから、奥さまの状態は少し好転されたのでしょうか。
それにしても介護される毎日、この日記を読むだけでもその大変さ・・・

私も今はどうにか自分のことが出来る状態ですが、何かあった場合、我家もそうなる可能性が大ですから、とても他人事とは思えません。
運動量が少ないので、食事の量も少ない量でよいのですが、暇と時間をもてあましていますからどうしてもオヤツも食べてしまったりしております。

一昨年、私も手術を挟んで一月近くベットで過ごした後、自分で足も身体も、人間の身体がこんなにも動かなくなってしまう、力が無くなってしまう事に驚き、情けない思いも経験しました。

介護されている最中も、様々な考えを持って行動されていらっしゃるご様子が、miyataさんらしいと思いながら、さぞご自身のお身体も大抵な事でであろうとも。。。
どうぞ、無理はされませんように。
とは言ってもケアマネさんが書かれているような態度では、ご家族だけで乗り切っていくしかないようですが。
by シマリス (2007-05-26 10:34) 

タダタダうーんとうなってしまいました。

私の友人は要介護五の夫を在宅介護をしています。しかし彼女がしていることは胃婁への経菅栄養と夜間の吸引尿器の設置です。

毎日ヘルパーさんがきたら紙オムツに変えてベッドから車椅子へ
夜娘夫婦が戻ったら車椅子からベッドへの毎日です。

宮田さん
これ以上頑張ってはあなたが倒れます

何かいい方法はないでしょうか
うーん一時入院しかないかなあ?
by (2007-05-26 11:03) 

練習菌

そのうち腰を痛めてしまいそうだなあ。
相撲取りは背中に力をいれているからマワシだけで持ち上がるけど、
脱力したらやはり支えられないと思う。
うちの奥様が足を骨折したとき、車椅子の車への積みおろしだけで、
腰が痛くなった経験があります。
無理をしないで下さいねえ。
by 練習菌 (2007-05-26 11:35) 

Silvermac

抱え上げるためには腰に力が入ります。腰痛の前歴があれば、再発の可能性もあります。余程のご注意を。いまの私は、クイックルワイパーで掃除するだけでも腰に応えます。介護時には簡単なコルセットを着用するのも良いともいます。通販ですが、私が家で使用している信頼性の高い製品がありますので、もし関心があれば、ご一報下さい。
by Silvermac (2007-05-26 12:32) 

確かに力の抜けた人間の身体は重いです。(w_-; ウゥ・・
私σ(=^‥^=)も腰を痛めた原因は、中腰姿勢が多かったためだったのですが、今では中腰を辞め身体全体を使って支える介助方法を学びなおしました。お陰で腰痛は軽減しました。

miyataさんが文章中で述べている相撲の姿勢は、盲点でありとても参考になりました。体重の重い方の介助をする際に考えてやって見ます。ペコリ(o_ _)o))

ケアマネさんの人間性と会社の姿勢もありますが、『とにかく売り上げ重視』という考えを持った方のようですね。
現場で稼動していても、ケアマネさんの仕事の内容が伝わってこないのと、報告しても鼻で笑って話を聞く人もいるので、いいケアマネさん&悪いケアマネさんの基準が判りません...( = =) トオイメ
by (2007-05-26 13:31) 

左膳

拙者も腰痛持ちのため、コルセットを巻いています。
腰は身体全体の中心で、もし痛めると何も出来ません。
なかなかないさんが言われるように、
一時入院しかないかも?
miyataさんもゆっくり休めればと思います。
by 左膳 (2007-05-26 14:10) 

miyataさんの紹介されている本は私も持っております。
たしかにおしゃるようなことは書かれていませんね。車いすやキャスター付きのイスに移乗とかいってもうちの中がフラットでないといけませんしね。その当たりケアマネの方から介護グッズ(改装的な部分も含め)などアドバイスはなかったのでしょうか・・・腰痛はコルセットなど予防具もありますが、救急隊員だかがもっている腰にまいて奥様のような方を支えるベルトがあったような気がするのですが・・・・そうまわしのような感じです、うろおぼえですみません。ヘルパーが一人じゃ入浴介助が・・・っていうケアマネの話も、疑問です。いよいよとなれば、市の入浴サービスやコ○ムンのような入浴サービスもありますです。
by (2007-05-26 16:52) 

suzune-k

こんにちわ
気持ちに逃げ場がないのです
誰に相談しても「他人事」なんです。
介護にどれだけ精神が参っているか
いつか自分がそうなった時に
息子たちに面倒をかけるなら
いっそのことと何度思ったことでしょう
人生の谷底がこれでもかこれでもかと押し寄せてきます
私が足りない所だらけだからですか?
もう しんどい しんどい 
こんな自分にうんざりする
by suzune-k (2007-05-27 11:06) 

miyata

シマリスさん、こんにちは。
ずっと元気はなかったのですが、トイレには自分で起きたし散歩だっていきましたし、どうして突然足が萎えたようになったのか理由がわからなくて病院に行きました。最初に疑ったのはやはり脳でしたが、その疑いは晴れたのでちょっぴりホッとしています。あと残る疑わしさは、転倒によって引き起こされた自分の無力感かな。だとしたらこれはちょっと時間がかかりそうです。そのまま起ないことを選択でもされたら大変です。あれやこれや考えながらでないと、やってられない気分です。
by miyata (2007-05-27 16:15) 

miyata

なかなかないさん、こんにちは。
ご心配いただきありがとうございます。入院も少しは頭によぎりました。さいわい、デイケアの方が親切におっしゃってくれますので月曜日から外に連れ出して様子を見てみます。もしこれで変化が無ければ病院に相談してみようと思います。
by miyata (2007-05-27 16:19) 

miyata

練習菌さん、こんにちは。
やはり、50キロぐらいになると重いですね。しかも軟体だから特に感じます。だけど、経験的にはちょうど車いすくらいの重さの時とかが危ないですね。時にはやかんの重さでぎっくり腰になるときもあるし。まあ、日々ウエイトトレーニングのつもりでやるしかないですね。嫌だなと思うと、とたんに体はその方向に反応しますから。
by miyata (2007-05-27 16:23) 

miyata

SilverMacさん、こんにちは。
腰の状態があまりよくなさそうですね。とても心配です。これは聞き逃していただいても良いのですが、高齢者の腰痛の場合、抗うつ剤を飲むと3割の人に効果があるという事を読んだことがあります。
コルセットですが、私も二種類ほど持っています。手術後のやつを入れると三種類になりますが、これはもう体型が変わって装着できません。記念です(笑)。筋肉痛で腰が重いのは確かですが、体が固まってポキッと折れそうだという感じがなく、なんとなく躍動的な感じを持っていますから、しばらく大丈夫だと思います。どうもありがとうございます。
by miyata (2007-05-27 16:30) 

miyata

kuriさん、こんにちは。
昨日、二時間ヘルパーさんが来てくれまして、二人でいろいろ検討したところ、半身で下手に手を入れて腰を掴み、もう片側の手を相手の反対側の手に添えるようにすると、さらに安定することがわかりました。手を添えることによって、相手には支点が出来たような安心感と安定感が生まれるのですね。ヘルパーさんからの重要な知恵は、添える手は相手の手首は掴まないこと。相手からこちらの手が掴めるようにすることなどでした。相撲ではありませんが、引きつけは大事ですね(笑)。こちらの腰も安定しますし、膝が沈んで臨戦態勢となります。
ケアマネさんのことは、まあ・・やめときます(^^ゞ
by miyata (2007-05-27 16:37) 

miyata

左膳さん、こんにちは。
ご心配ありがとうございます。腰には苦労させられましたから、よ〜く、わかります。入院はそれなりに頭の中にありますが、果たして受け入れてくれるかどうか・・。それに入院した途端、認知症が進んでしまうとという不安もあります。なんだかきっとそうなるに違いないという感じさえするので、躊躇します。もう少し様子を見てみます。
by miyata (2007-05-27 16:41) 

miyata

タケノコさん、こんにちは。
タケノコさんのコメントを読んで、はっと思いつきました。それはロッククライミングなどでロープを引っかけるようになってるやつですよね。ベルト状のもので腰に巻き、それが両足につながってるようなもの。これさっそく山屋さんで探してみようと思います。
入浴はちょっと考えなくてはいけないかもしれませんね。かなり大変です。入れるまでが大変ですが、湯船にはいると実に気持ちよさそうにするので、毎日でも入れてあげたいのですがねえ・・。
by miyata (2007-05-27 16:46) 

miyata

すず音さん、こんにちは。
そうなんですよ。だからそうなってみるとそれがよくわかるので、世間から距離を置いてしまうようになりますね。他人事であるのは間違いないのでそれは仕方がないのですが、この孤独感を少しでも良いから慰撫してくれるものはないのかと切実に感じたこともあります。これからも感じつづけていくのでしょうね。
子供や他人の世話になりたくないというのはほぼ共通した感覚でしょう。これ、どうしてそうなのか良く理由がわかりません。死ぬことと年老いて衰えていくことと別の次元にあるからなんでしょうか。衰えるのが嫌なんですね、きっと。これを断ち切るのは死だけだということは知識としてわかっているので、そう考えるのかもしれません。生きてしまった以上、年老いて衰えるのは避けられませんから(別の言い方をすると、年老いた先にも必ず死はありますが逆に死はどんな年代にもある)なにか違う視点のとらえ方が必要なのではないかと、最近読んだ本で考えさせられました。
by miyata (2007-05-27 16:59) 

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