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感じ方への不安 [介護と日常]

妻は先週の月曜日からお風呂に入っていなかった。22日には発熱したので24日にヘルパーさんに手伝ってもらおうと思っていたのだが、ヘルパーさんが妻の様子を見てお風呂はやめておいた方がよいのではというので、断念した。仕事が重なり、もうあとは見て見ぬふり。お漏らしがひどいのでとにかくひたすら拭く。とても切なくて心が痛かった。
が、振り切って仕事を片付ける。
昨夜10時、トイレの後、意を決して入浴を敢行する。問題はどうやって裸体のまま浴槽に入れたり出したりできるかだ。まあ、案ずるよりやってみればそんなに難しくなかった。バスタオルを両脇に回して吊すように持ち上げ、おろすだけ。風呂は嫌だと抵抗していた妻だったが、浴槽に肩までつかると気持ちよさそうだった。しかし、重い!身体の隅から隅まで二度洗いして、すっきりしたのか冷たい水をごくごくと飲んで布団ですやすや寝始めた。やれやれという感じでこちらも肩の荷がおりた思いだったが、12時過ぎ寝返りをしようとする様子がぎこちないので布団をめくってみると、案の定やられちまった。飲んだ分出るのは仕方がないことで、だけどこんな事はいままでほとんどなかったんだけどなあと、気落ちする。シーツを剥ぎ、パジャマを脱がせて身体を拭き、夜中だけど半分やけくそで洗濯機を回す。アパートやマンションでなくてよかった。

殯の森(もがりのもり)
一昨日、BSハイビジョンでカンヌ映画祭、審査員特別大賞をとったという作品「殯の森」(もがりのもり)を見た。
つまらなかった。楽しみにしていただけに、がっかりした。映像美というには自然の描き方、人間と自然との関わり方も通俗的だし、なによりも設定自体が奇異としか思えない。愛する妻に先立たれた認知症の夫は、妻の幻影と共にピアノを弾き、一緒にダンスを踊るいわば遅れてきた(ん?今風なのかな)軟弱なインテリ風なのに、風体はまるで浮浪児か山男風。妻の幻影と戯れる姿は33年前だったら典型的な中流かもしくはそれ以上という生活しか見えてこない夫婦なのに、人も近づかず、道もないような山奥にある妻の墓を求めて彷徨うなんて、考えられない。それにこの夫の描かれ方は認知症ではない。というかそう描けてない。ただの現実逃避男だ。老人ホームのお年寄りたちには生活感も現実感もないようだし(逆にその映像だけが背後の現実を見せていたともいえる)、物語として唯一生々しい現実をかいま見せるのは、子供を亡くしたことによって夫から責められる若い介護士。だけど、妻を責める若い夫は、もう情けないというしかない男であり、その責めを黙って受け止める女は、実に類型的な不幸を背負った女の姿である。ナンセンスを描いているのだろうか?なんだかとても安易な自己救済物語を見せられた気分だった。人間的な考察も以前見たイギリス映画の「アイリス」の方がずっと踏み込んでいた。
だけど、逆に悩んだ。この感じ方はおかしいのではないか?自分はどうしてなんの感動も感じないのか、奇妙な不安感が立ち上がってきた。だれかこの映画の評価の仕方を教えてください。


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Silvermac

殯の森(もがりのもり)の映画評に100%同感です。こんな映画がカンヌ映画賞を受賞するのは、理解できませんでした。どの様な基準で審査しているのか、知りたいものです。録画してみたのですが、見終わって直ぐ消去しました。「アイリス」は、私も見ましたが、こちらは良く作られていましたね。
by Silvermac (2007-05-31 06:30) 

シマリス

おはようございます。
奥さまは10日ぶりのお風呂でしたか。
きっと気持ちの良かったことでしょう、でもその後が・・・
私事ですが、この冬頃から寝る前に入浴して充分身体を温めてから寝ると、夜中も目を覚まさず、朝までおトイレに起きずに済むことが解り自分でも助かっております。
以前は、早めのお風呂と、飲酒により、思っていた以上にきっとからだが冷えていたのだということですね。

しかし入浴すれば水分も補給しなくてはいけませんので、日中の入浴の方がよいのか・・
miyataさんは本当に良くお世話されています、そしてその大変さは胸が痛くなるほどです。

殯の森は見ておりませんのでコメントできませんが、人を描くこと、その人物の生き方を切り取り、再生すると言うことの困難さは思った以上に力量がいるということなのでしょうか。
「アイリス」はふたりのアイリス、夫役のおさえた演技も良かった、脚本も優れていました。
by シマリス (2007-05-31 08:23) 

ヘルパーが入浴を行う場合、簡単ではありますが、『バイタルチェック』というのを行います。
何をするのかというと、血圧計で血圧を測り、体温を測定するのです。(体温計は電子体温計、血圧計は電子血圧計だけ使用可能です)
そして、血圧で上が140~150以上であれば、熱がなくても入浴を断念することがあります。体温だと37.0℃くらいで断念することがあります。

夜中の失禁処理は・・・仕事でやったことがあります(昼間に入浴した後に、夜のオムツ交換で大洪水という状態)が、思い出しただけで『げんなり』しました。本当にお疲れ様です。"○j乙土下座
by (2007-05-31 13:28) 

miyata

SilverMacさん、こんにちは。国際的な評価の基準軸というのがあるんでしょうね。でも、それってあまり信頼がおけるものじゃないかもしれませんね。それにしても、ソネットだけですけどブログを久しぶりに見渡してみますと、すごく評価が高いですね。日本の古い習慣として詣墓と埋墓を分けていたという両墓制まで言及して評価していらっしゃる方もいましたが、その両墓制に対する評価が納得できませんでした。死者や死霊に対しては愛惜ももちろんあるでしょうが、畏怖や恐怖、汚穢の対象でもあったからで、私の田舎では死者に対して「縁切り」というべき儀式が残っていましたし。いや、酷評するつもりはないのですが、私は認知症に視点を寄せすぎていたかもしれません。
by miyata (2007-05-31 14:11) 

miyata

シマリスさん、こんにちは。
普段、入浴の時間は決めてないのですけど、夜寝る前に入浴させると、ぐっすり寝てしまいますね。だけど、お漏らしの確率が高いようです。

映画は、まあ、とてもきれいな映像で女優さんも今風でなかなかでしたが、妻に先立たれた認知症の男役は、ちょっといただけませんでした。初めて役者に挑んだ人らしいのですが熱演でしたけど、さっぱりでしたね。認知症を演じるってことはお猿さんになることと勘違いされてるんじゃないかと思いました(笑)。カンヌ映画祭の評価には、なんだかちょっとイデオロギーを感じました。
by miyata (2007-05-31 14:26) 

miyata

kuriさん、こんにちは。
うちのヘルパーさん、そんなチェックなんてしませんですねえ(笑)。
あ、でもあのとき、額にては当てていたような気がします。
入浴後はやっぱりリラックスするんでしょうね。確かに「げんなり」です。でもまあ、気持ちよく排出したということでよしとしましょう(^_-)-☆
by miyata (2007-05-31 14:32) 

私はその手の映画は見ない事にしていますのでよくわかりません。
映画は映画でよいのですが現実から遠くかけ離れている事が多くあまり参考にはなりません。
無理に参考にする必要もないのでしょうが・・・・

医学がこれほど進歩していると言うのに頭の中だけはあまり進歩していませんね。
miyataさんの奥様に対する深い愛情が手に取るようにわかります。
奥様は幸せですね。
by (2007-05-31 17:25) 

左膳

拙者も、だんだん頻尿の度合いが強くなり、寝るときは
尿取りパッドが放せなくなりました。
それでも時々布団を汚し、母親にいやな思いをさせています。
miyataさんも、充分に身体に気を付けて下さい。
by 左膳 (2007-05-31 18:47) 

miyata

だるまさん、こんばんは。
だるまさんは映画あまり見ないんですね。ここのところテレビ漬けの毎日でしてテレビで上映される映画もたまに見るようになりました。だけど、映画はやはり映画館ですね。もう何年前になりますかねえ。女房と娘と三人でいったイギリスのコメディー、Mr.ビーンでげらげらと他愛なく笑ったのが最後ですね。
脳でも、認知症は最後の難病で残るような気がします。
私の今の生活を、愛情だと言われるとちょっと首をかしげるところがあります。かといって意地とかメンツとか世間体とかそういうものもありません(意地は少し入っているかもしれませんが)。自分の不幸を嘆くことも今はもうまったくありません。だけど、困ったな、困ったなと日々オロオロしているのは事実です。女房は幸せなんでしょうか。だったら嬉しいのですが。ある時、夜中に帰るといいますので、帰っても誰もいなくて一人だよと言ったら、「ちょっと一人になりたいから」ってドアを開けようとしました。そうとうストレスがあるんだろうなとそのとき思いました(笑)。
by miyata (2007-06-01 00:59) 

miyata

左膳さん、こんばんは。
そうですか。左膳さんには嫌な話題でしたね。ごめんなさい。
ここホンの最近から体力が落ちてきたような自覚があります。息が切れるのです。寝不足が一番の大敵です。
ところで、阪神がよくありませんね。二連勝したとはいえ、今の成績はどうしたことでしょう。終盤になって、「あのときの七連敗は痛かった」と言われるような気がしてきました。
by miyata (2007-06-01 01:06) 

奥様の入浴の件タダタダ感動しました
我が家は一人では入れたのです
しかし私が居ると嫌がる
必ず音の聞こえる場所に正座していました。
殯の森の森男性の評価はよくないですね

私は監督が娘と同じくらいの年齢というひいきがありましてよく此処まで描けたと甘いです
しかしグランプリの外国人の評価基準はずっと気になっています。

監督があの日主張していましたことは「認知症になっても感情は生きている」でしたね。

この点を介護施設で大切にして欲しいなと思います。
by (2007-06-01 22:18) 

miyata

なかなかないさん、こんばんは。
私は、あくまでも想像でしか書けませんが、海外の評価基準は、エコロジーというイデオロギーではないかと想像してます。
実はですね、あのインタビューのそこの部分がちょっと引っかかったのです。他は別になるほどなあと聞いていたんですが。
思うに、認知症は認知症で良いんです。でも、これを「病名」から引き剥がすことができたら、自分は自分の場所から解放されるのではないかと私は思っているところがあります。ですから、監督が「認知症は現代医学と社会が創り出した病気です。感情だけが残っているという評価しか出来なかったら、彼らから人間性を奪ってしまいまるで動物のように扱うことにもつながるし、それを許してしまうことになります。そうではなくて、全人格的な交流が可能だと私は思ってこの作品を作りました」と言っていたら、すごく感動した上で、やっぱりくさすかもしれません(^^ゞ
by miyata (2007-06-02 00:37) 

layzo

この映画は、おそらく見ないと思います。
たぶん観たあとに、イヤな思いが残ると思うからです。
by layzo (2007-06-02 22:38) 

miyata

たみぞうさん、こんばんは。
あのう、そんなに悪くないと思いますよ。安っぽくもないし、ちょっと私がやぶにらみ的に見てしまった感じがします。映像もきれいですしね。
by miyata (2007-06-03 03:07) 

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