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桜が終わる。 [介護と日常]

桜の花が咲き、そしてどんどん散っていく。いつもと変わりない営みがやはり毎年初めて出会うかのように繰り返されていく。千年に一度の大地震もその変わりない営みのひとつに過ぎないとわかっていても世界を容易に変えてしまう。こういうときだからこそ、私は「日本は」というあらゆる議論から耳を塞いでいる。望むのはただひとつ、被災された方々のひとりひとりの要望が最大限満たされることだ。すでに町や市の行政単位でも被災した住民と深い亀裂が覗いていることだろうことは想像に難くない。ましてや県、国となるとほとんど個々の要望など消し飛んでしまう。絶望的な願いだが、この関係を逆転して被災した住民、地域住民に従属した順序で村や町、市や県、そして国の行政においてあらゆる対策が講じられることを願う。

原発事故については、とにかく早く危機的な事態が収拾されることを望んでいる。そして現場で全力を挙げて対策をしている人たちに休息が訪れてくれることを心から望んで止まない。その一方で少し唖然としたことがある。それは炉心溶融により水素爆発を起こした原子炉に自衛隊、消防庁、警察庁が放水車を集めて決死隊のように原子炉に放水している報に接したときである。
私は正直言うと、こうした事態に備えて電力会社もしくは国に(それは自衛隊でも消防庁でもよいのだが)原子炉専門の事故対応部隊が当然存在しているものと信じて疑っていなかった。原子炉の事故は国内において今回が初めてではなく、かつ深刻な事故はスリーマイルやチェルノブイリで経験しており過去ニュースやドキュメントなどでそういう部隊が編成されたり、活動しているのを見ていたからで、日本でもそれが当たり前にあるものと思っていたのに、そういう備えがまったく存在していなかったことに唖然としたのだ。そうした備えがあったとしても現在までの事態の推移を止められなかったかもしれない。そうだとしたら原発は運用されるべきではない。原子力発電が駄目という議論以前にこうした事業の推進、建設、運営の問題が日本社会の構造的な問題として鋭く露出している。この裂け目をヒステリックな恐怖や政治的なプロパガンダで塞ぐのではなくもっともっと抉られなければいけない。内閣を罵倒したり、人生の達観を披瀝することでこの問題を覆い隠そうとしたり卑小化してはならないということは私でもわかる。安全であれば原発を拒否しないという非政治的な人々の心情を包括した、政党や大衆運動家が先導する平和運動を超える平和運動、反核・反原発運動を超える反原発運動の可能性を信じたい。
また、もうひとつの感想として原子炉建屋への放水を実行した部隊の隊長のインタビューをテレビで見た。隊長はまず第一に隊員の安全が優先だったと言い切り、危険で困難な仕事に隊員を就かせたことに対しその家族に謝った。不況が続くなか派遣切りや自殺者の問題、高齢者問題と抜け道が見えない閉塞した社会状況の中で、テレビやネットで「日本」というかけ声がうねりとなっている中で、この隊長のインタビューはテレビで煽るだけの馬鹿コメンテーターや、政治家、経営者とはまったく違う健全さを痛ましさとともに示してくれた。捨てたものではないと思った。

妻がリハビリ病院に転院して三週間近くが経った。今度の病院はリハビリ部門と病棟との連携があまりよくないように見える。リハビリの成果を聞いて喜び、翌日には病室で体調を崩す姿を見てがっかりする。そんな三週間だった。これが普通の病院なのかもしれない。一年前に入院していた病院はすこし特別だったかもしれないと思うようになった。15日に担当者会議があったが予定の二ヶ月から三ヶ月という期間を待たずに今月末に退院させたい旨を伝え消極的ながら承諾を得た。28日に退院する予定である。

次に自分のことだが半年ぶりに検査した甲状腺ホルモンの数値が悪くなっていたことがわかり、チラージンという薬を増量した。同時に別の病院で処方されていた抗うつ剤が合わないということで変更された。倍以上に距離が伸びた妻の病院に臆せず自転車で通い続けた。結石による潜血反応がなくなり、石は排出されたのではないかということになった。結果、なんだか体は元気だ。地震以来読むのを中断した長編小説[断崖・ゴンチャロフ/岩波文庫全五巻]を再び開く勇気はまだ無い。最初から読み直す元気もまだ無い。それでも良いと思っている。

※ちょうどログインするためにメールをチェックしたらブログレポートが送られてきていた。今月でブログ開設以来6年経ったと教えてくれた。
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練習菌

桜の開花とともにタラの芽の季節がやって来ました。
今回の雨で一気に芽吹くだろうなあ~
ああ、単車に保安部品を付けないと~
地震の危急反応でmiataさんが復活したのが、
私にとっての数少ない良いニュースでした。
by 練習菌 (2011-04-19 00:33) 

ほんのり

東京では、もう、つつじの季節になって来ましたよ。
被災地の東北では桜が咲いているでしょう。

そろそろ、ボタンも咲くかな?
今年は、ちょっと遅くのスイス妹の里帰りだったので、つつじも楽しめました。

miyataさんご一家、きっと疲れが溜まっていると想います。
私も、真ん中の妹の三回忌が終わって、何か肩の荷が少し下りた感じがして、少し気持ちが軽くなって来ました。
by ほんのり (2011-04-19 08:15) 

yakko

お早うございます。
桜の花も散ってしまいました・・・新緑の季節となりました。
自然は同じように移ろっていく部分と、あるとき突然牙をむく部分と
どちらも受け入れていくしかないのでしょうか? 
ただ原発は別ですね。漠然とした不安が現実になり、これからどうなっていくのでしょう ! 現場に関わっておられる方々に敬意を表します。miyataさんも お体、くれぐれもご自愛下さい。
by yakko (2011-04-19 09:25) 

Silvermac

日本人は最悪事態を考えない、考えるには政治的抵抗が強い国だと思います。曖昧に、或いは中途半端な対策で済ましてきた結果でしょう。福島泰一原発は安全性に問題があるとの意見の識者も多かったようです。
第一原発は建築後40年、隣の新しい原発は大きなダメージを受けていないことが証左です。安全よりも利益を優先させた結果でしょう。政治家・御用学者の責任も見逃せません。
良く生られたようで良かったですね。私も節制の結果体重2キロ落ち、可成り改善されました。
下記URLは現場自衛官の悲痛な声です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5869
by Silvermac (2011-04-19 10:10) 

hana2009

miyataさん、こんにちは。
久しぶりの更新なのに・・予定を待たずに、奥様の退院ですか。

原発事故に対しては、ただ対応の悪さや遅さを嘆くばかり。
難しい事は、私は何もわかりません。

退院して家に戻られる事、ご家族が揃うのは喜ばしい反面。
本人の体力、家族の負担を考えたら、一日でも長い入院生活をと思えるのですけれど。。。
担当者会議は私の時もありましたが、会議とは名ばかりで今思えば家族の要望が入れられる事はなかったです。
もうすっかり過去の事になってしまいましたし、あの頃はすっかり心まで弱ってしまっていたから仕方がなかったのですけど、何よりも自分の事なのですから今でしたら自分自身も参加して言いたい事が沢山ありました。

あの大地震の当日から、息子は直接ではないものの・・・しばらく福島県庁の対策本部に入っておりました。
現在は都内の自宅から職場へ行って働いてはいますが、来月の3日からはまた福島へ行く予定だそうです。
そのような関わりを持ってしまった事からも、今の事態はとても人事ではないのです。
by hana2009 (2011-04-19 11:29) 

miyata

練習菌さん、こんにちは。
そうですね、もう山菜の季節なんですね。
なんか、シャキッとしなければと思ったのは地震のせいだったのでしょうか。なんだかそんな気もします。また、お待ちしております。
by miyata (2011-04-19 13:25) 

miyata

ほんのりさん、こんにちは。
京都の鴨川ではシダレザクラがまだ花を残しつつ、ソメイヨシノはほとんど葉桜となってしまいました。
妻も含めてちょうど疲れがたまる谷間のような時期だったかもしれませんね。歳と共に回復が遅れ、少し長引いたかなという感じですけどおかげさまで身体が健康を求めはじめたようです。もう少しという感じですね(^^)
by miyata (2011-04-19 13:30) 

miyata

yakkoさん、こんにちは。
自然は、生かしてもくれるけれども殺しもするということですね。恩恵の部分を最大にしつつ繋いでいくということしか出来ないのかもしれません。
原発はおっしゃる通りです。核融合も自然現象を取り出しているのにすぎませんが、活かして制御する段階に付随する文化が達してないのかもしれません。この事故はながい年月をかけて背負わざるを得ないことでしょう。
by miyata (2011-04-19 13:46) 

miyata

SilverMacさん、こんにちは。
いろいろ思うことがあります。政治的な対立が二項対立だけに集約されていってしまい結果必要なものが抜け落ちていってしまうのではないかとか、政府という場合どこを指していうべきなのかとか。確かに行政の長は内閣府ですが内閣が替わっても行政機能は官僚機構によって不変のままです。リンク先を読みました。まさに現場においてもこういう矛盾を抱えたまま事がなされている現実を前に、なにが変わらなければいけないのか、それは今の繁栄を築いた社会の安定をも犠牲にしなければならないのか、とても大きな事態に直面しているような気がいたします。
身体はおかげさまでだいぶ良くなってきました。ヘモグロビンa1cも下がりはじめました。自転車では苦痛だった五条坂も平気で上れるようになりました。お腹が引っ込めばさらによいのでしょうけど・・。SilverMacさんもお大事になさってください。
by miyata (2011-04-19 14:01) 

miyata

hanaさん、こんにちは。
原発事故はほんとうに心配です。対応が悪いのか遅いのかさえわからない始末です。

早期の退院を決意したのは、体力を回復させるには自宅の方がよいと判断せざるを得なかったからです。様子がおかしいのでそれを伝えても(これはリハビリ現場から病棟にも伝えていたようですが)ほとんど意識がなくなってからしか対処してくれないとか、個々の状態に合わすことなくリハビリから病室に帰っても厳しく長い座位の保持とかが強制されます。自分で入れられない入れ歯は入れてくれないし、歯磨きが出来なければ磨いてもくれません。したがって歯がないから食事はミキサー食のままです。まるで修道院のようです。退院させると家族に伝えたら子供達も大賛成してくれました。

息子さんは災害に関係しているお仕事に就いているのですね。ほんとにいつ収束するのでしょうか。収束といわないまでもせめてはやく安定してくれることを願わざるを得ません。hanaさんも余震などで大変でしょうがお大事に。
by miyata (2011-04-19 14:14) 

yakko

お早うございます。
ブログ開設 6 年 オメデトウございます。(*^_^*)
私は先日 3 年のお知らせを貰いました・・・まだまだガンバリます。
by yakko (2011-04-21 09:28) 

miyata

yakkoさん、こんにちは。
ありがとうございます。はやいものですね。紆余曲折はありましたが、その足跡が残されているのが不思議であります。
by miyata (2011-04-21 12:54) 

すず音

こんにちわ 毎日毎日余震があってその度にビクビクして生きています。
地震の少ない地域に丸ごと逃げたいです。3月10日に戻って・・・
湾岸部の被害は全く手付かずのままです。道路が広くなって 車が多いです。桜がやっと5分咲きです。いまだに毎日寒くて冬タイヤのままですね。交換しないととは思っても気力がないです。奥様退院なのですね。こちらの老健やホームもことごとく被害を受け、遊楽館という地域の体育館に集められています。高齢者や障害者が行く場所がありません。どうなるんでしょう?甲状腺も大事になさってください。ストレスでデータがぐっと悪くなりますから。真面目な方に多い病気なんですよね
by すず音 (2011-04-24 13:27) 

タケノコ

関東は、計画停電もなくなり、TVもバラエティー番組に、春の新番組、CMも徐々に再開され、自粛ムードから少し通常モードになりつつありますが、ぐらっとまだ余震があります。ニュース自体も被災地情報から原発にシフトしているのも、自分らのことしか考えていない感じも致します。支援物資等もあるのに、分配ままならず、欲しい人の所に届いていないようですね。我が県、市でもかなり早い段階で物資は受付締め切っていました。

どちらかといえば原発反対、その他エネルギー代替論派なので、やっぱり起きたか、そして、miyataさん同様の唖然。細かい配慮のできる国と言われた国が、次の次の手がない。防止の方に頭がいって、事故が起きてしまっての想定が甘かったようですね。他の原発に電源車配置といっても、手動切り替えだし、全冷却システム等を動かせる電力はとうていまかなえないことも後で判明・・・

リハビリ病院でも診療報酬のせいか、経営主体なのか画一的で形ばかり。真の意味でのリハビリを行ってくれる病院はないのか。これは妻入院時にも感じましたが、私も通え、妻を受け容れられるようなところは
近くにはそこしかないのが現状でした。
by タケノコ (2011-04-27 00:25) 

Allora

ご自身が元気になられたようで、良かったです。奥様の早期退院も、詳しいことは分りませんが、その方が良いように思います。

原発に関しては、早く収束して欲しいのと同時に、現場の作業員さん達の健康状態が心配です。
政治家諸氏は足の引っ張り合いで、見てられません。誰が首相であっても、批判されるんでしょう・・・
マスコミの粗探しのような報道振りも、何だかなぁと思います。
by Allora (2011-04-27 18:13) 

うしさん

原子力発電 放射線いやなことですね

時に今症状が出ない
いつ何が出るかがわからない
私は赤ちゃんのときにラジウムを使っています
大腿部に赤いあざがあって慶応病院でラジューム消したそうです
6歳上の姉は覚えています。

このことを知ってから何かにつけ
ラジュームの影響でないかと不安をもちつづけました。
貧血や不妊症(結婚して6年目に始めて妊娠)
by うしさん (2011-04-27 18:15) 

練習菌

>うしさん

赤いあざを消す為に、貧血や不妊症のおそれが有るような治療はしないと思いますよ。
ラジウムから出るガンマー線を使った治療なんだと思いますが、生殖機能や造血機能を
損なうような当て方はしないはずです。ご安心下さい。
今はレーザー光線で治療するみたいですね。

by 練習菌 (2011-04-28 15:10) 

うしさん

練習菌 酸ありがとうyございます昭和12年のことで慶応病院でした。
幸い一人の女の子には恵まれ。帝王切開で弟の輸血200cc
をしました。閉経後は貧血はないです。
by うしさん (2011-04-29 10:35) 

miyata

すず音さん、こんばんは。返事が遅くなりました。
施設入所の方々が、また世話をしている方々の懸命の努力にもかかわらず、いまだ現状から抜けられていないという報に接しながら忸怩たる思いを禁じることができません。なんとかこれから先長くかかるだろう時間を耐えて欲しいと念じつつ、すず音さんのご家族みなさんもまたそうあって欲しいと祈っております。
by miyata (2011-05-02 02:19) 

miyata

タケノコさん、こんばんは。
ほんとにどうしたもんでしょうねえ。困ったと言っていても事態は解決しないし、やはり我々としては専門家、技術屋さんを信頼するしか道は残されていません。情報の隠蔽とか操作とかは政治の分野なので、この政治の分野のゴタゴタが現場を萎縮させたりしないようにするしかないのではないでしょうか。今直面している反原発の本質は、原発に関わる現場にしか存在しないように思います。

リハビリ病院はいろいろだなあということが今回よくわかりました。前の病院はちょっと京都では特別だったのかもしれません。
by miyata (2011-05-02 02:29) 

miyata

Alloraさん、こんばんは。
まさに、まさに。まったく今の世の中は想像以上に壊れかけていますね。ぜんぶ逆に読んでいった方が事態の全貌が浮かび上がってくるのではないかと思うほどです。妻の退院は今日になりましたが、帰ってきた途端にひょじょうも戻り、一安心です。
by miyata (2011-05-02 02:34) 

miyata

うしさん、こんばんは。
原発、放射線、ほんとに気が晴れませんね。
でもうしさんの心配が晴れて良かったです。菌さんは原子炉に実験で出入りする人ですから確かです。原発事故も当初から菌さんの見立て通りだったのでかなり正確に事態を飲み込めていました。
by miyata (2011-05-02 02:37) 

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