満六十歳になりました

今日で還暦を迎えた。自分でも説明できない充足感があることに驚いている。父親の年を超えた事実がひとつの大きな要素でもある。父は満６０歳になるほんとの直前にこの世を去った。自分がここまで生きられるとは思わなかったわけではない。ただ、漫然と年を重ねることに対する人並みの抵抗感はあったが、自分がこの十年を生きてきた間にもっとも変節を強いられたものがこの抵抗感であった。転向といってよいかもしれない。そして、この転向とよべるかもしれない変化をもたらしたものは疑いもなく妻との生活である。

なにかに急かされるように生き急ぐことが無意味なことであったとは思わない。だがそのことに過度な価値を見出すことはない。感傷もない。すこしだけ理解できたこともある。それは歴史的な存在として私（たち）は生きているということだ。ただあるがままの自然に埋没した自然そのものの個人として生きているわけではない。自然もまた歴史的な自然として対象化された自然としてある。だから、自然界の自然のままの生死に依拠する死生観に異議を申し立てる根拠はここにある。60年間生きてきてその程度かと言われたら、そうだとしか言いようがない。復路は回帰線を避けながら歴史的な自然の順序にしたがえるように、社会の順序から徐々にはぐれながら無数の無名のひとりとしてやがて歩けなくなるまで歩を進めていくだけである。

妻が歩けなくってからずっと懸案だった引っ越しがようやくかないそうだ。まだ契約をしていないからどう転ぶかわからないが、ほぼ決まるだろう。息子が仕事をしている工房の路地に並ぶ崩れ落ちそうな長屋がある。ほんとうに崩れ落ちそうで、壁の隙間から外が見えるようなところだが大家の方から借りて欲しいと持ちかけられた。場所的には願ったりかなったりのところだ。一軒ではあまりに狭すぎて無理だが二軒を一軒として借りられることになった。工房は目と鼻の先だし、なによりこの界隈にとどまれることが大きい。改装工事があるので早くて来年の四月だろうと思うが問題がひとつ片づいた。気が向けば車椅子を押しながら買い物にも散歩にも行ける環境が手に入る。

ブログに復帰すると書いたのに過去最長の空白を招いた。その間ツイッタやG+などでネットに触れてきた。満たされる欲望もあれば砂をかむような空虚にも向き合ってきた。誰がなにを言うのか、なにを欲しているのかあらかじめわかっていたなどとは言えない。ただ、繰り返される言動のうねりの中で、なにか大きな変動が起きようとしている気がする。だが、哲学者小泉義之がいう「恐怖の下で平等で対等になった人々」たちが呼びかける共同性への拒否権だけは表明しておきたい。恐怖や悲惨、そして安心・安全で未来を担保することも過去を留保することもしない。「今日」の問題に向き合うのみだ。

コメント 21

お誕生日、〃￣∇)ゞｵﾒﾃﾞﾄｫｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ♪
ここ数年、本当に大変な毎日でしたね。
でも、色々生活のリズムが変わってこられて、生活しやすくなると良いな♪と心より望んでいます。

大好きな父がこの前の台風１５号の暴風雨の最中、もうすぐ９６歳で老衰で亡くなりました。
危篤状態が１ヶ月以上続き、危機を４～５回も繰り返し、家族、スタッフに挨拶もできるような奇跡も起こし、暴風雨の中、旅立ちました。
あんな暴風雨の中でも良いのに…
これも、父らしいかな？とは想いますが…

心配していた母も元気で、１１月で８６歳になるので、このまま父の５年間過ごし、母も介護のために３年半過ごしたホームで暮らす事になりました。
本人から決めた事で、父の葬儀が終わってから、昨日やっと広いお部屋に引越しをしました。

後は事務的な事が重くのしかかってきますが、少しずつ弁護士さんの手を借りて進んでいきます。
by ほんのり (2011-10-03 07:56) 

還暦オメデトウございます。私も還暦がつい昨日のような気がしていますが、現実は18年経ちました。
昨日は,傘寿記念のクラス会でした。敗戦、南海地震に遭遇し、卒業は80名弱だったと思います。昨夜集ったのは14名、全員数病を抱えているようですが、歳を忘れて昔に戻りました。
住環境も変わるとのこと、還暦は再スタートです。もう60年ガンバッテ下さい。(^▽^)

by Silvermac (2011-10-03 08:11) 

お早うございます。
還暦 ! おめでとうございます。(*^_^*)
月日の経つのが早いですね〜　私もとうの昔に還暦は過ぎましたが
実感がありません・・・(;゜ロ゜)　鏡を見て納得しております。
息子さんの傍に引っ越しされるそうで、心強いですね。
平穏な日々でありますように〜〜〜
私達は二人で一人前・・・力を合わせてガンバリます。
by yakko (2011-10-03 10:02) 

miyataさん、こんにちは。
お誕生日、おめでとうございます。そして還暦 ! おめでとうございます。家の夫より、少しだけお兄様なんです。
これこれ、この文章もﾎﾝﾄに久しぶりで・・・改めて、もっと読みたいと思いました。
お引越しも決まり、来春の新たなお楽しみも出来ましたね。
その前後も合わせて、何かとお忙しい毎日が続かれることでしょうけれど。
でもご自身が仰るとおりに、一歩一歩のんびりと参りましょうね!!


by hana2011 (2011-10-03 16:20) 

こんばんわ。
お誕生日おめでとうございます。
還暦おめでとうございます。
快適な住宅へ引越しも決まったのですね～
さっと外に出れる環境は心にもゆとりが出来ますよね。
春の桜とともに素敵な笑顔がUPされますように～♪
by tonton (2011-10-04 23:42) 

みなさん、こんばんは。
またまた返事が遅くなっております。誕生日を祝っていただきましてどうもありがとうございます。返事になにを書こうかなあと思っているとついつい考え込んでしまって書けなくなってしまいます。すみませんでした。
by miyata (2011-10-06 01:11) 

piさん、どうもありがとうございます。Nちんの新しい絵、嬉しかったです。言葉の自販機はあったら素晴らしいですね。ドラえもんのどこでもドアに匹敵すると思いました。
by miyata (2011-10-06 01:13) 

ほんのりさん、こんばんは。
ありがとうございます。それに、つつしんでお悔やみ申し上げます。これだけを伝えれば良かったのかもしれませんが、ずっと考えあぐねておりました。残されたお母様が心安らかに過ごされることを。ほんのりさんも無理をなさいませんように。
by miyata (2011-10-06 01:18) 

SilverMacさん、こんばんは。
ありがとうございます。それにいつも気にとめていただいて感謝します。もう60年頑張るという気持ちで、頑張ります(;^_^A ｱｾｱｾ…
by miyata (2011-10-06 01:20) 

chihiroさん、いつもありがとうございます。
by miyata (2011-10-06 01:20) 

yakkoさん、こんばんは。
いやあ、ほんとにあっという間ですね。yakkoさんが「とっくの昔」というのが信じられないですね。お若い！
引っ越しは早くて来年の春になりますが、なんとなくウキウキしています。年明けから一気に今の家の整理をやろうと思ってます。ほんとは田舎に帰りたかったんですけどね。それはもう、封印しました。
by miyata (2011-10-06 01:24) 

hanaさん、こんばんは。
ありがとうございます。ご主人ももうそろそろというお年なんですね。なんとなく気持ち的にガックリ来るかと思っていたんですがそうでもなかったので自分でも意外です。逆にスッキリしたというか、せいせいしました。
引っ越し先が決まるまではウジウジしていましたけど決まった後は、楽しみです。ほぼ全面改築である程度こちらの意向を反映してくれるということで、設計士さんが来てお話しが出来るのも楽しみのひとつです。

歩を進めるにあたっては、ただ、確かなことは年相応にしか進めないと言うことを、まあ自覚せざるを得ないということなんですけどね。これはしかたがないですねf(^ｰ^;

※追伸；ありがとうございました！ほんとにすみません。めちゃ美味しいです！
by miyata (2011-10-06 01:33) 

tontonさん、こんばんは。
どうもありがとうございます。ご無沙汰しておりました。お元気でしたか？春になれば鴨川の桜や清水など、ばんばんアップしますよ。楽しみにしていて下さい。
by miyata (2011-10-06 01:36) 

御無沙汰です。奥様の介護でﾌﾞﾛｸﾞも休止中のようでしたが､復活され嬉しく思っています。

小生も3月で60歳になり､特段感じる事もなく過ごしていましたが､夏に同い年の友人が逝ってしまいました。
人生60年。後は何時逝ってもいいや何て思っていましたが､実際に友が逝ってしまうと､早すぎるよなぁと・・・・
人間の心の持ちようとは､おかしなものだと感じました。

ﾌﾞﾛｸﾞにもｺﾒﾝﾄをいただきましたが､当方も母の介護があり日帰りか1泊2日なら､何とかそちらへ行けるかなと思っています。いずれにせよ一度お会いしたいものだと思っています。
それではどうぞ御家族皆さん､お元気で過ごされますように。
by Allora (2011-10-06 15:49) 

Alloraさん、こんばんは。
遅ればせながら、還暦おめでとうございます。学年が一つ上ということになるんですね。同級生が亡くなるとギョッとしますね。とっくにそういう年になっているんだと思うのですが。
私の方から伺ってもよいのですが、Alloraさんに京都を紹介してもらいたいなという願望があるのです。ちょっと勝手でしたでしょうかf(^ｰ^;
とくにフクムラにご一緒できたらと。でも、けっして無理をしないようにしてください。これもタイミングですので、京都には行けないけどそっちにおいでということであれば、行きますから。
by miyata (2011-10-07 03:40) 

７４歳になりました
２月前までは世界のどこでも一人で行けると思っていましたが
末梢性めまいで２日(午後１１から午前１１まで）内服が盲５０日です食慾がないのは薬の副作用らしいですが、これって肝臓に負担がかかっていることですね肝臓を守るには良質淡白と野菜が必要です。やっと赤みの牛肉が食べられるようになってフムフムこれで肝臓はげんきとおもっています。主治医がいつも元気なあなたがどうしたの？暑いさがこたえたの？何ｔもなかったですが
by ミッチー (2011-10-07 18:33) 

ミッチーさん、こんばんは。
目まいは不安になりますね。早く良くなって下さい。今年の夏も暑かったですが、昨年に比べると楽でした。今年の夏、何事もなく乗り切れたのがとてもよかったです。
by miyata (2011-10-08 04:39) 

過去最長の空白を招いた。その間ツイッタやG+などでネットに触れてきた。満たされる欲望もあれば砂をかむような空虚にも向き合ってきた。誰がなにを言うのか、なにを欲しているのかあらかじめわかっていたなどとは言えない。ただ、繰り返される言動のうねりの中で、なにか大きな変動が起きようとしている気がする。だが、哲学者小泉義之がいう「恐怖の下で平等で対等になった人々」たちが呼びかける共同性への拒否権だけは表明しておきたい。恐怖や悲惨、そして安心・安全で未来を担保することも過去を留保することもしない。待ったく同感。ＤＭで書けばいいものをわざわざコメントでも名気宇私のブログに書いて一種の誹謗となることすらわからない方もいますし。一方は削除しアドレスもかきこみ禁止にししました。一方は置いていますがこんなことを知った友人は相手の品性といいますがかかれると、こんな人と付き合っているのけいべつ！
by ミッチー (2011-10-09 09:20) 

よくなったように思います
きつい薬から。かるいくすりになりました。
今回ほど兄弟が近くにいる
いえ２３歳からこのための努力をしたように思います。
今日は義妹の優しさにほろっとしました。入院などは生計が別の保証人が要りますねお金も払って退院してからそれを請求され遠くにいる兄弟に
（近くの兄弟の）家には泊り客がいたので）捺印サインを頼んでささやかな感謝の印をしたらいやみをいわれて落ち込んだりするのです。
by ミッチー (2011-10-12 23:44) 

ミッチーさん、おはようございます。
入院までしていたのですね。ネットについてはどのような事情があったのかわかりませんが、あまり神経質にならない方がよいかと思います。入院の保証人制度は面倒ですよね。保証金を取られる方がよっぽど気楽です。もっとも保証金に保証人を要求する病院もありますけど。
by miyata (2011-10-13 08:51) 

10年前に宮田さんが還暦とは〜！
いつの間にか、私も65歳になろうとしてて、新型コロナウイルスのワクチンを打ちました。
by 練習菌 (2021-06-14 14:13)